夜中いつものように目が覚めてテレビをつける。番組名はあとから知ったが、「昭和歌謡に引き寄せられて」というNHKのドキュメンタリー番組の再放送。
新宿に昭和歌謡を集めた古レコード店があるらしい。番組はこの店に来る客を3日間にわたって取材したもの。
昭和歌謡なのに若い人が多い。昭和歌謡が好きだという外国人までいる。
いつも歌謡曲が流れている東京下町の商店街で育ったから、歌謡曲は幼いころから耳にしていたが、それもフォークソングくらいまでで、ポップスとかニューミュージックとかなるとてんで判らなかった。
歌詞がどの曲も字余りで、メロディも長ったらしい歌詞に無理やりつけたように聴こえて、全く聞く気にもならなかった。
しかし若い人達が好きだという歌はそういう歌ばかり。理由は、「歌詞に救われた」という話が多い。
歌詞に救われたという話は若い女性だけでない。仕事で悩んでいた時、歌を聴いてずいぶん気持ちが楽になったとか納得したとか、そんな話をする年配男性も何人かいた。
若いしっかりした顔つきの男性がなにかレコードを探している。取材者が「大学生ですか?」と声をかけると高校生だという。とても高校生には見えない。
選んだレコードは本田美奈子の「Oneway Generation」。私は聴いたこともなく、題名すら知らない。
「人ごみの真ん中 今いる場所さえわからないように 自分の生き方が見えない時ってあるよね」
なるほど、こういうことかと思う。若者の心が共感する歌詞なのであろう。
この高校生は、歌が自分の将来を選ぶきっかけになったという。取材者が「将来の希望は」と訊くと「自衛隊」。カッコいい。誰かがやらなければと思う、と答えていた。
76歳という男性が石原裕次郎の「赤いハンカチ」を聴いている。まさに我らの時代の昭和歌謡。
「死ぬ気になれば ふたりとも 霞の彼方に 行かれたものを」
死ぬ気になれなかった、恥ずかしい話だが、と語っていた。若い頃、女性を裏切ったのであろう。
昭和歌謡は人を救うし、元気づけるし、行動のきっかけにもなるし、己の卑劣さを思い出させることもある。
何が真実であるかは誰にも分からない。しかし、人は自分の真実は知っている。
昭和歌謡は、人が自分の真実に触れること、ということか。


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