孫のフランス留学が近づいてきた。
8月の初めに出発するが、フランスの大学は前期が9月から12月、後期が1月中旬から5月までで、各学期に短期休暇があり、夏休みは3ヶ月以上という。勉強している暇があるのかと思う。
孫は中学の3年間をイギリスで過ごしている。留学が必修科目になっている学部を選んだのもそういう経験からなのだろうか。
なにもフランスなど行くこともないと思うが、もう何事も私の理解を超えている。孫は英語はもちろんペラペラらしいが、フランス語も喋れるらしい。
高校時代にクラブの友人3人を連れて我が家に遊びに来たことがあるが、その3人とも英語はペラペラという。とても私が思っているようなレベルではない。
フランスで何を学ぶのか聞いたところで分かるわけないが、年寄りとしては、「人生若い時に一人暮らしの経験も大事なことだ」という古くさい教訓話を送るくらいのことしかない。
二日ほど前、孫から「これからそっちに行くね」というメールが家内に入ったらしい。
孫が遊びに来ることは珍しいことではないが、用事もはっきりせず、突然来るというのは初めてかも知れない。
何かあっての相談事なのか、あるいはデパートで美味しそうなうなぎ弁当を見つけたからじっちゃんに持っていこうと思ったのか。
いろいろ思いめぐらしたが、じっちゃんちでばっちゃんのご飯が食べたいということだった。
「それならもっと早く言ってくれればいくらでも好きな物を用意したのに今日はカレーなの」と家内が伝えると「それでいい」という返事だった。
4時過ぎに「こんにちは」と顔を出し、食事前にいろいろおやつを食べ、ソファーで眠り始め、しばらくして起きてからカレーライスを山盛り食べて、「また来るね」と言って帰って行った。
「これから行くね」と言ってやって来たが、特別会話が弾んだということもない。いつもの通りのままだった。
フランス留学は楽しみでもあり、なにか新しいことへの挑戦という胸弾む気持ちが孫の中にあるはず。だが外国での一人暮らし、不安や寂しさを感じていても少しも不思議ではない。
ひょっとして、その不安や寂しさを子供の頃から行き慣れたじっちゃんとばっちゃんちで紛らそうと思ったのかもしれない。
私はそのことに全く気がつかなかった。思いもしなかった。ただ楽しい留学生活が待っているだけと思っていた。
孫が帰って、なにしに来たのだろうかと思った。
私が大事にしている写真がある。孫が小学校に入る時写真館で二人で撮ったもの。孫の家にもあるはず。
いままでその写真を孫と二人で見るようなことはなかったが、その日はどういうわけかその写真を書斎の壁から外して孫と一緒に見た。
孫は特別懐かしいとかよく覚えているということはなく、「あんときのじゃん」という感じ。
いつものように来ていつものように帰って行ったが、ひとついつものと違うのは二人で写真を見たこと。
なぜか分からないが、孫が幼い頃の写真を二人で見たくなった。こういうことって孫としかないものだと思う。



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