生か死か それは問題である

つぶやき

 がんを発症してうつになってしまう人がいることはそんなに珍しいことではないらしい。命に関わるような病気になれば、気分も滅入ってうつになってしまう。ありえることだな、と言うより、そうなるのが普通である。

 がん治療の最良方法は手術ということになっている。手術ができるということは「助かった」ということにほぼ近い。最悪は「もう治療方法がない」

 「手術」と「もう治療方法がない」の間に放射線治療と化学治療がある。

 最近では手術ができない場合、入院せずに外来通院で抗がん剤治療をするケースが多いらしい。そうした場合には、さらにうつ病の危険は増大するという。

 「手術はできない、外来通院で抗がん剤治療」というのは、がん治療においてあまりい状態を示す言葉ではない。
 ネット社会。この言葉の意味することを知ることは簡単である。

 外来通院によるは抗がん剤治療は、主治医から見放されたような気になるものである。手術ができなかったことの絶望感に加えて、そうした暗澹とした状態が続くために、不安感がさらに増幅されてしまう。うつ病発症の要件が揃ってしまうことになる。

 うつの一般的症状とは、前向きな気持ちが持てなくなること。深い絶望感に捉われ、将来に希望が持てなくなる。また仕事や趣味に対する意欲、興味も失われ、自分の殻の中に閉じこもってしまう。
 そうした心の症状に平行して不眠、疲労感、食欲減退など身体的な症状が伴うことが少なくない。

 家内の絵の教室の人に全くこの通りの症状の人がいる。悪性リンパ腫を今年の春頃発症したが、完治したことになっている。だが気持ちの落ち込みは回復しないらしい。

 うつの怖いのは自殺衝動だという。自殺者の98%が精神疾患を有し、その多くがうつ病状態であるというWHOの報告にあるらしい。
 
 しかし精神的な疾患を生ずると人はなぜ死という方向に向かうのだろうか、と考えたが、生に向かう精神疾患というのもあるのではないか。

 それがあった。「過剰な生存への執着」という精神疾患がある。
 脅迫性障害(OCD)、健康不安障害(心気症)、パニック障害、躁状態(双極性障害)。
 
 ただし「生に向かう精神疾患」というより、「死を恐れるあまり生にしがみつく精神疾患」と表現する方が医学的には近いという。

 人間とはやはり複雑である。

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