生きながらえることと人知れず死ぬこと

つぶやき

 喉頭がんを発症して3年と6ヶ月。手術をしてから3年と2ヶ月。4ヵ月放っておいたことになる。

 夜中トイレに起きたときいつも水を飲んでいた。のどに引っ掛かるようなことがなければがんではないと思っていた。

 知人が食道がんで亡くなった時、食べものや水がのどを通りにくいという話を聞いていたからである。
  
 のどがふたつに岐れていることを知らなかった。ひとつは気管へ,ひとつは食道へ。気管のがんは喉頭がん。食道に通じる部分は咽頭がん。

 手遅れかもしれないと思ったが、若い医師の診断はT1a。
 初期の声門がんで声門の片方だけに発症し、リンパ節への転移はない。

 喉頭がんは「上部声門がん」「声門がん」「下部声門がん」の三つ分けられる。
 一番発症が多く、それでいて生存率が高いのが「声門がん」。

 いつものようにファイバースコープが苦しい。ゴホゴホしている時、「イー」と言って下さいと医師の声。「イー」とか「ウー」とか、今までどれほど言ってきたことか。

 今日は定期検診の日。「再発はないようです」
 「そうですか、ありがとうございます」
というやり取りがこのところ3年続いている。

 「再発することはないでしょう」という言葉を聞きたい。

 画像よりも人の目で確認することがなにより大事、という医師がいた。
 今日の若い医師は、人の目だけではなく画像診断が重要です、と次回はPETctの予約を入れる
 
 前回は去年の8月であった。あれからまた1年が経った。

 自宅に帰り、近所の知人の孤独死を妻から聞く。

 いつもプラーン、プラーンと、スーパーの買い物をぶら下げて、我が家の前をなにか考え事でもあるかのように、のったりと歩いていた。

 東大卒で大手石油会社の社員であったと聞いている。大分前から妻と別居。マンションに一人住まいであったらしい。私より少し年齢は上。

 この暑さでの孤独死。

 あの歩き方が気持ちに残る。スーパーに向かっているはずなのに、なんの目的もないようだった。

 この2ヵ月の間、我が家の窓から二人の人が消えてしまった。

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