母の思い出はいいものだけにしておきたいが、あまりに口が悪すぎた。
兄のお嫁さんは結婚後すぐに口腔がんを発症したが、「病気を判っていて結婚したのではないか」と詰めよったことがある。
母は意地悪とか人が悪いということはない。子供のために一生懸命働き、女手一つで3人の子を育てた。
こういう発言をその度注意したが、「悪気があっているのではない。私の腹の中は真っ白だ」というのが常であった。
母は自分の心配を口にする人であった。思いついたことをなんでも口にしてしまうのである。
言葉の社会性というものを全く理解していない人であった。利口な人ではないということである。
お嫁さんとうまくいくはずがなく、兄は結婚してすぐに家を出たが、たまに母を見に家に寄ると母はドアーに立ちふさがって「帰ってきてくれ」と泣きわめいたらしい。
兄も母が可哀そうになり、いったん奥さんと一緒に戻ったが、母の言葉はその後もひどかったらしい。兄は2度家を出ることになったが、母はとうとう最後まで自分の言葉のひどさに気がつくことはなかった。
子供のために一生懸命だったなあ、ということと、ひどい人であったなあ、ということが母の思い出にある。



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