カルロス・ゴーンの事件以来、人質司法という言葉を耳にする。
黙秘している被疑者や被告人を長期間勾留することで自白を強要する、日本の刑事司法制度を批判する用語である。
法務省は決して自白の強要はしていないと繰り返し説明している。
五輪汚職で逮捕された角川歴彦という人が、この4月に7か月にも及ぶ勾留から保釈された。その年齢や病気などから長期間の勾留に関する批判が新聞に記載されていた。
角川歴彦氏も、日本の民主主義というものに疑問を持った、と述べている。
先年の東京オリンピックにおいて角川は贈収賄事件に関与したらしい。本屋がなぜオリンピックなどで贈賄を、と思うが、そういうことで会長である角川歴彦が逮捕されたということだから、そういうことがあったのであろう。
村木厚子さんという厚労省のお役人が、何年か前に公文書偽造か何かの罪で逮捕された。勾留期間は5か月にも及んだ。結果は無罪となった。冤罪の被害者として村木さんは一躍時の人となった。
人道的に許しがたい取り調べも行われたらしい。しかし村木さんは多くを語らなかった。あの柔和な顔で検察の不当捜査を告発していたら、世間は大いに検察の体質に関心を持ったのではないかと思うが、残念なことにしなかった。
カルロス・ゴーンは見事に逃げた。Gone with the windである。
あれほど検察の権威だ、威信だということにこだわっていた日本の検察は世界に恥をさらした。と同時に、権威主義的な日本の捜査に対して世界の批判を受けることになった。
日本の捜査手続きの異常さについてゴーンはことあるごとに語っているようである。不当であると同時に異常だというのである。
時代劇のように今でも水責めとか、寝かせないとか、膝の上に石を重ねるとか、そんなことをして自白を強要しているのではないだろうか。見たこともないからそんな想像をする。
ガーシーなる男もしばらくは出てこられないという話がある。
検察をなめてしまったら検察の仕返しはひどい。検察はそれを楽しみとする組織である。ガーシーは甘かった。
刑事事件の立証責任は検察にある。しかしその検察の立証のために被疑者を拘束する。拘束されることの恐怖感、不安感を被疑者に強いて、検察のための供述を得ようとする。フェアでないことは昔から分かっていることである。
自白や検察が用意した供述書にサインしなければ勾留期間は延長される。合点がいかないことが行われているのである。
勾留は個室が用意され、食事も入浴もできる、とホテルのパンフレットのようなことを言うが、まさかホテルではあるまい。
何が個室か。被疑者を快適に過ごさせるためのものではない。被疑者を精神的に追い込むための施設である。
人質司法と批判されるのは当然である。正しい反論はできないから、そんなことはない、いうだけである。
あまりお上のことについては障らないほうが身のためだが、逮捕取り調べに関して検察に関する重大な事件があった。しかしあまり大きくは報じられなかった。
建物を新築とか購入した場合、登録免許税という税金を払って登記をするが、住宅用家屋証明書という書類を添付すると税率が大幅に軽減される。
この適用を受けるためにはその住宅に本人が居住することが要件である。
大阪検察庁の特捜検事が知人のためにこの書類を取得して登記をした。
その知人は暴力団の人だったが実際にはその建物に入居しなかった。
それにより大阪地検はこの現職検察官を詐欺かなんかの容疑で逮捕した。
当時この逮捕された検察官は、大阪地検内部における裏金の存在について、上層部の責任を告発していた。誰が見たって告発を阻止するため口封じであることは明白である。
住宅用家屋証明書の取得に関して逮捕される。別にこのことについ書きたいのではないが、こんな微罪で検察官が逮捕される。
住宅用家屋証明書の不正取得は日常茶飯に行われている。私の知り合いにも何人もいる。バレていないだけのことである。
バレていないというより、税務署も書類を発行する役所も住宅用家屋証明書などに全く関心がない。告発などという面倒なことをする気はないから、このことが犯罪となったことは過去一度もない。
逮捕された検事にはいろいろ悪いうわさが流れた。「暴力団と関係を持つような問題ある人間」「裏金を告発したのは自分の出世が遅いことに不満があったから」。
この検事を逮捕した検事たちは、裏金でゴルフや高級クラブでの遊び三昧であったらしい。検事などの仕事にリベートがないことが不満だったという。裏金を作らなければ他の省庁役人と人間関係を作ることもできない、ということも理由にしたという話もある。
みんなそれぞれ理由をつける。正義であるべき検察内部にいろいろうごめくものがある。逮捕された検事には執行猶予付き判決が出されたと思うが、懲戒免職となった。
この人間模様にはまだ続きがあった。
裏金を告発した検事を逮捕した検事たちが逮捕されたのである。
時は2010年。罪は証拠改ざん、犯人隠匿などである。それはあの村木厚子さんの無罪判決に絡んでのことである。
大阪地検は村木さんを有罪にするため証拠を改ざんしていたのである。
村木さんは検察の証拠改ざんによって、あんなに長い期間拘留されていたことになる。ホンマかいなという話であるがホンマである。
最高検察庁は何より検察批判を恐れた。新聞に証拠改ざんが報じられる前からいち早く捜査し、いち早く関係者を逮捕した。
あってはならない検察官の逮捕。それも男女間の痴情のもつれなどであればまだまともであるが、証拠改ざん、犯人隠匿、これは司法の番人としてまずい。
同僚たちが逮捕されたことについて、「最高検もそこまでむごい仕打ちをすることもなかろう」、というある検事の談話があった。そういう思いに駆られるものがあったのだろう。逮捕した者も逮捕される。いずれも検察組織の犠牲だという話もある。
なんの憂いも気がかりなこともなく、机に向かいブログを書く。
社会の正義だの権威だの金儲けだのどうでもいい。ブログの脈絡に気を使い、少しはまともな文章を書こうとすることが人生大切なことである。
一点の曇りもない人生を送ってきた。しかし先週圏央道でのスピードが気になる。あのところにはオービスは無いと思うが少し心配である。 (了)
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