やはり不安である

つぶやき

 何度もこのブログに書いていることだが、老後資金というものに対する不安が払しょくされるということはない。
 老後資金問題というものを一般論で考えたところで意味がないが、世の中はどうなっているのだろうかという興味はある。

 ネットには100万円単位くらいで、日本人の金融資産の保有額を掲載しているのもあるし、3000万円を目安にしているものもある。
 それによれば全世帯の約78パーセントが3000万円未満、3000万円以上5000万円未満が13%、5000万円以上1億円未満が6%、1億円以上が3%弱とある。

 世帯主が65歳以上の二人世帯の貯蓄高は平均値2462万円、中央値1604万円という調査結果もある。
 思っていたのとは異なり、日本の社会はそんなに裕福ではない。

 「なぜ我々はこれほど老後を恐れるようになったのか」ということをテーマに、酒井順子というエッセイストが本を書いている。

 老後資金問題と言えば、2019年に行われた金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループの報告書で、「老後の30年間で約2000万円が不足する」と発表されて話題になったが、これは単純な計算をしたというだけのことであり、国民の老後資金という問題について、政府として検討をしたということではない。
 
 この発表には2つの反応があった。「そんな貯金で足りるはずはない」と、「そんな貯金があるはずがない」
 もちろん大きな反応は後者の方であった。

 老後資金問題は金融庁の発表から始まったことではない。その前からいろいろ取り上げられていたが、老後資金問題を大きな社会問題として国民に突き付けたのはNHKの番組であったという。
 2014年(平成26)に放送されたNHKスペシャル「老人漂流社会 “老後破産”の現実」である。
 
 これは2013年(平成25)に始まった「老人漂流社会」シリーズの二作目だそうだが、「老後破産の現実」が、世の中高年を〝震撼〟させた。

 一人暮らし高齢者が急増している中、その半数は、年金額が生活保護の水準を下回っている。そのような厳しい生活をする高齢者の姿を映し出したこの番組は、「明日は我が身」と、視聴者達に思わせることになった。

 年金だけで暮らすことができない日本。怪我や病気で働くことができなくなったらどうなるのだ、と「“老後破産”の現実」を見て思った人は大勢いたのであり、この番組が放送されて以降、老後破産に関する様々な情報が世に溢れた、と酒井氏は分析している。

 私もこの番組を見たが、去年あたり再放送されていたようである。NHKはその後も制作を続け、団塊世代に関する“老後破産”も放送していた。

 年金と貯えでなんとか老後を過ごしたいと考えているが、それは健康とか、家の事とかが順調な場合のことである。
 病気になれば夫婦揃って施設の世話になるかもしれないし、古くなった家の建て替えなど不可能である。
 
 NHKの番組は何を意図したものなのか。国民の不安を助長しただけのことである。老後資金の問題は解決できる問題ではない。

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