うなぎの名店を見つけた

つぶやき

 今日は秋分の日であったが、それに気づかず富士見市の公園に出かけた。

 道路が混んでいる。なんでこんなに混んでいるんだ、と口にすると隣で家内が、「さっき今日は秋分の日と言ったでしょう」とおこられた。

 新婚の頃、家内が食事の支度をして、家内が食卓に座る前から食べ始めた。とにかく「早く食べろ食べろ」という母に育った私はそういう食習慣になっていた。

 家内にしてみれば考えられないことであった。「膳部揃うて箸を取れ」が当たり前。食事が終われば私は肘枕でテレビを見て、家内はひとりであとかたずけをした。

 共稼ぎをしている家内に手伝うという気持ちが全くなかった。家内もよく我慢したものだと思う。そんな話を車の中で家内から仕返しのように言われた。

 弁解する言葉もない。「男は台所に立つものではない」という言葉を母からよく聞かされていた。男が台所に立つと出世できないという。

 中学を出たら男は働くものだと言う母が、そんな学歴のない息子の出世もないものだと思うが、ともかく母の子育てが私の妻に迷惑をかけることになった。

 昼前に目指す公園に着いたが、駐車場はどこも満車。空きを待つ車で行列もできている。

 普通の日にまたくればいいと車を引き返す。

 くる途中うなぎ屋を見かけた。なかなか風情のある店のたたずまい。ひょっとしておいしいのではないか。来たとおりに戻ればその店に行けるのではないかと車を走らせた。

 12時半頃うなぎ屋に無事到着。店内はテーブル席が4つくらいと座敷。
 
 「今はテーブル席が満席で座敷しかありませんが」と先に店に入った家内に店員さんが説明する。

 そこに杖をついた私がヨタヨタとたどり着いたものだから、店員さんはどうしたらいいものかと戸惑った顔をした。

 座敷に席を取りお品書きを見ると、上うな重3700円、特上6700円とある。上と特では何が違うのかと店員さんに聞くと、特は4枚、上は2枚。

 それなら値段の問題ではなく、高齢者の食の細さを強調しつつ上を注文する。

 なかなかうな重が出てこない。テーブルには「ご注文を頂いてから調理しますので30分ほどお待ちいただきます」という添え書きがある。

 でも不愉快な待ち時間ではなかった。店員の接客態度もいい。
 私たちが店に入ったときにすでに入店していた人達が箸を取り始めたので、こちらの焼き上がりももうすぐのはず。

 うな重の楽しみはふたを開けることにある。思っていた以上の大きさのかば焼きが2枚。山椒をうな重の外にまで振りこぼしながら、ともかくなにより一口。

 「おっ、これは…」という感じ。最近なかなか巡り会うことのない味。うなぎはふっくらと柔らかく、タレは薄味だがしっかりうなぎに合う。川越の名店と言われる味より品がいい。

 このごろトイレの回数を気にしているのでトイレを借りた。トイレの行きかえりに厨房のご亭主の顔が見えることもトイレを借りた理由。

 「ごちそうさん。とても美味しかった」と声をかけた。ご亭主は歳のころ60代の半ばくらい。

 ご亭主はにやりと笑って顔を上げたが、すぐに手元に目を戻した。店員さんに「また来ます」と言って店を出た。
 
 店のアプローチには、家内は当然知っているが私の知らない名の花が咲いていた。

 公園は残念だったがうまいうなぎ屋を知った。それに家内にすまないことをしてきたなと思う一日でもあった。

 
 

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