「僕はあなたを幸せにする自信はありませんが、あなたと結婚すれば僕が幸せになる自信があります」
釣りバカ日誌という映画で、西田敏行扮する浜ちゃんという主人公が、みち子さんという女性に言うセリフ。正確ではないかもしれないがこんな内容だったと思う。
このプロポーズで石田えりさん扮するみち子さんは結婚を決めるのであるから、浜ちゃんの言葉は女性の心に響いたことになる。
しかし、この言葉は果たしてプロポーズの言葉と言えるのだろうか、という論議があった。
新聞の娯楽欄で取り上げたことであるから議論があったと書いたのだが、この記事を読んでみると確かに考えさせられる。
映画では、みち子さんは誰が見たって浜ちゃんより将来性のある銀行員とつき合っていることになっていて、それをやめてこの言葉によって浜ちゃんとの結婚を決意するのであるから、この言葉は彼女にとってプロポーズの言葉となったことになる。
新聞の論調は、浜ちゃんの人間性を表した素晴らしいプロポーズの言葉だという評価と、自己中心的で幼児性のある男の言葉に過ぎない、という2つの評価を紹介する。
女性の投稿には「男の勝手な言い分で、取るに足りないセリフである」と映画そのものを否定する厳しい指摘もあった。
プロポーズというものを私は知らないが、「貴女を幸せにするから結婚してください」というのが昔からの男の定型句のようである。
しかし「幸せにします」という男の言葉は、根拠のある場合もあるだろうが、根拠のないことが普通である。
なにより女性を幸せにするにはお金が必要である。一生生活に困らないという大金持ちのご子息ならばそういうことも言えるだろうが、一般男性にはそんな自信はない。
そんな気持ちの中で「幸せにします」と言うことになっているのだから、言う男性にはためらいがあり、聞かされる女性も、信じ切ってのことではない。
浜ちゃんの言葉に普通の女性は「私を好いていてくれていることはうれしいが、じゃ私の幸せはどう考えているの」という思いがあるはずである。
話は私事になるが、私は女房に、「貴女を幸せにします」などということは言ったことがない。学歴もなく、いつ倒産してもおかしくないような会社に勤めている者として、そんな大それたことは口にできるものではない。
それならつき合わなければいいではないか、女性に無責任である、ということになる。
その通りだが、しかし学歴はなかったが若さがあった。学歴からすればやめるべきであるが、若さはそういうものでもない。
実は私と浜ちゃんは似たところがある。私はあのセリフが良く分かる。
私の結婚は女房が控えめに言う「式場を決めよう」という言葉からであった。
今思うと結婚について何も言い出さなかった自分が無責任で情けないと思うが、このわずかな女房の一言が今の私の人生を築いてきた元であった。
生活というものに対する女性の堅実さに感心し、見とれるだけであった。女房に頭は上がらないし、足を向けてもいけないのである。
話を戻すが、「貴女と結婚すれば私は幸せになれる」という言葉にみち子さんは納得したのだということに気が付いた。
みち子さんは「あなたを幸せにします」という男の言葉は何度も聞いてきたことであろうが、みち子さんの心はそれでは動かなかった。
ではなぜ「貴女と結婚すれば私は幸せになれる」という浜ちゃんの言葉に納得したのか。みち子さん以外の人では自分は幸せになれないと言っているのである。
それはみちこ子さんの、自尊心、ナルシシズムというものを満足させるものであったから、ということになる。
女性にとってこのことはかなり重要なことらしい。女性は男以上に自尊心というものをもって知るらしい。
浜ちゃんはそれを知っていて口にしたのかは分からない。ただ一つ言えることは、浜ちゃんのプロポーズのセリフが成り立つのは、みち子さんが石田えりさんであったからである。
男にすれば天国のような女性である。このシリーズの途中でみち子さん役は浅田美代子さんに代わっている。妖艶から可憐へということであるが、物語が変わってしまったということも言える。 (了)



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