今年大学生になった二人の男の孫がいる。
そのうちひとりから、フランス・リヨンに留学が決まったと連絡があった。
もうひとりから、来年の定演はベートーベンの七番に決まりました、というラインが入った。
みんな青春なのだ。
リヨン。どんな街か知る由もない。ただ絹織物で栄えた都市ということと、リヨン国立管弦楽団を知っている。
ヨーロッパの街。「夢のよう」という家内の言葉でしか知らない。
ベートーベンの7番。孫にこの曲の素晴らしさを伝えようという気もあったが、感動は共有できない。音楽を言葉で語ってはいけない。
今日少し力仕事をした。立ち上がれない。自分の衰えを知る。
家内は訊くまでもなくリヨンに行く気になっている。なによりヨーロッパが好きな人である。
リヨンに行く孫はばあちゃん子。フランス好きのばあちゃんのためにリヨンを選んだのかもしれない。
家内にとって人生最後の海外旅行になるかもしれない。幸いにもそれができるということはいいことである。
私は人生最後の留守番をすることになる。筋トレをしなければならない。
家内から「羽田に着きました」という電話やメールをもらうことが、人生において一番うれしいことであった。
家内に会えるということではなく、無事に日本に帰ったということがうれしいのである。



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