何年か前、ある評論家の書いた新聞の記事を読んで衝撃を受けたことがある。
太平洋戦争の敗戦間近いときのことである。
大日本帝国陸軍の最高指導者は本土決戦、1億総玉砕を叫んだ。私は1億総玉砕の意味が良く分からなかった。
もちろん日本の国民全員が死ぬ覚悟で本土決済にのぞむ、ということは理解するが、それが具体的にどういうものなのか想像できなかったのである。
よく言われる女、子供が竹やりをもって米軍兵士と闘う、というだけの意味なのか。
この評論家の記すところによれば1億総玉砕とは、降伏することなく国民が竹槍をもって米軍に立ち向かえば、米軍は日本人の累々とした屍を踏んで皇居に進軍することになる。
無防備な一般市民、女、子供を殺戮してまで勝利することに米軍は嫌気がさし、そのうち撤退するであろう、ということである。
まさに衝撃であった。そして1億総玉砕の意味が初めて分かり納得した。
あの時日本は、こんな思考能力しかない指導者によって戦争を行い、正確な人数を把握することもできない数百万の国民を死なせてしまった。
わずか70年ほど前まで日本はこのような国であったのである。合理的思考の歴史を持つ民族には理解できない思考経路である。
1億総玉砕の考え方が、日本人の本性に根ざすものではないことを祈りたい。
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