高級老人ホーム

つぶやき

 6000万円の入居金を払い、豪華な高級老人ホームに入居したというのに、わずかな期間でホームから退去を決めたという人の記事を読んだ。

 ホテル並のサービスと、プールまである設備があって、なんの不自由もない快適な老後の生活ができるものと思ったが、そうではなかったという話である。
 
 退去を決めた理由は2つあるようだ。
 ひとつは近隣住民と交流する中で「ちょっと金持っているからって、あんなところに住んで偉そうな顔をして……」と言われたこと。

 もうひとつは毎日が退屈であったということらしい。
 そんなことは入居前から分かっていてもよさそうだが、入居して分かったらしい。

 高級なところに住んでいる人は普通のところに住んでいる人とつき合うべきではない。

 自分ではエラそうなことを言う気もなく、そんな気持ちも持っていないとしても、つき合ってはいけないものである。

 この近隣住民という人の言葉がすべてを言い表している。人はにこやかに人づきあいをしながら人を妬み憎しむ。

 この人たちが悪い性格ということではなく、高級なところに住んでいる人は人に妬みや憎しみを持たせてしまうということである。

 毎日が退屈であったということは元気ということである。老人ホームは元気な人が入るところではない。

 頼れる家族もいないということであれば、将来の不安に対して老人ホームに入居することも一つの選択である。

 ただこの人の場合はまだ元気であったというだけでなく、浮世が恋しかったということである。浮世が恋しいようであれば、そもそも老人ホームに入ってはまずい。

 老人ホームは姥捨て山ではないが、覚悟を決めて入るところである。浮世の何もかも捨てる気がなければ入るべきではない。

 老人ホームは死んだような気持ちになって、元気なうちは明るく元気に過ごし、わけが判らなくなったらすべてを他人に託すところである。

 繁華街の雑踏が恋しいなどの未練は捨てなければいけない。希望をもって生きるところではないのである。

 この人は77歳で、以前はライブハウスを経営していたというが、その割には人生経験は乏しかったのかもしれない。

 判ったようなことを言うが私は老人ホームの経験はない。
 順調に歳を取れば老人ホームの世話になるのであろう。元気なまま90歳になるということは稀なことであるからである。

 老人ホームがピンキリであることは良く分かる。出来たらキリには行きたくない。

 私のような理屈ポイ年寄りでは介護の職員とケンカが絶えないだろうし、そのころは腕力ではかなわないから、顔も体中も傷だらけかもしれない。介護職員だって頭に来れば暴力くらいするだろう。

 やはり金がなければだめだと思う。以前仕事で知り合った介護施設の女性の社長さんは、「ひとり1億あれば」と言う。

 歳をとって他人の介護を受けるには、リベート分が必要ということなのだと思う。地獄の閻魔様の裁定もリベート次第というぐらいだから、老人ホームを天国にするのも地獄にするのも残念ながら金次第ということになる。(了)

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