静かな夜更けに

つぶやき

 世の中は、衆議院選挙の真っ最中のはずだが、とても静かである。
 午前中、自宅近くで選挙カーとすれ違ったが、以前のようにマイクから大きな声での連呼はなかった。私の難聴が進んでいるのかもしれない。

 2年程前、80歳の半ばを過ぎた知人から、「年末年始の挨拶をやめました」、との葉書をもらっているので、以後連絡を取ることはしなかったが、当時膀胱がんを患わっているという話を聞いていたので、久しぶりに電話をしたらまだ生きていた。

 膀胱がんは再発しているようだが、医師は手術するもよし、しないのもよし、ということらしい。
まだボケてはいないようだったが、2年前、私の病気を心配して電話をくれた時の話は全く覚えていなかった。

 お互いいい話があるわけでもないので、長電話は無用と私から、「ほな、お元気で」と電話を切った。多分最後の会話ということになるのだろう。

 夕方のニュースで、服役囚の認知症問題を取り上げていた。
 自分がどうして刑務所にいるのかも分からないような者から、口を開けたまま意識不明の者までいる。

 懲役10年、20年、無期懲役ともなればそういうことにもなるだろう。
 刑務所も、ほっとくことはできないだろうから、介護施設と同じようなことをしている。
 服役囚だからボケることはない、ということはない。そんなことを考えるとこちらの頭がボケそうである。

 いろんなところでいろんなことが起きている。
 しかし、テレビやネットを通じていろんなことを知っても、そういうこともあるんだ、ということでしかない。

 他人事でないことは分かっているが、テレビで知ることはみんな他人事にしておきたい。

 静かな夜更けに、7番アイアンを枕元に置いて寝る。
 昔はグリーンを攻めるものであったが、今は身を守るためのものである。

 正当防衛が成立するには、犯人の武器とバランスがとれるものでなければならないとされている。犯人がナイフなのにこちらは日本刀ではダメということである。

 しかし他人の家に押し入って、暴力を働いて金を強奪する連中に、バランスをとる必要などあるのだろうか。犯人の命の安全を守るようなものである。

 何を考えているのだろうかという法律がこの国には多い。

 新聞も、「1日も早い強盗一味の逮捕を」、という報道ではなく、「1日も早くホームセンターで防犯グッズを揃えよう」、と言っている。
 とんでもない世の中になってしまった。

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