半袖のシャツとダウンジャケットが一緒に歩いている季節である。
いつもウォーキングは夕方にしているので、きのうの陽ざしの強さには驚いた。
こういう季節をなんと言うのだろうか。小春日和の前にもう一つ季語を作らなければならないようだ。
鴻巣市の広大なコスモス畑を訪ねた。約9万平方メートルというが、東京ドームの敷地面積は4万6千平方メートルだそうである。
東京ドームは野球場であるが、計量カップのようになってしまった。
視界の端から端までコスモスだらけ。これだけのコスモスを見ると言葉がない。呆れるような景色である。
入場料、駐車場は無料。飲食のための売店などは一切なし。市が所有する土地だそうだから主催者は鴻巣市ということになるのだろうが、なんでもかんでも入場料だ、駐車場料金だと金をとるイベントが多い中で、珍しいことである。
以前行った嵐山市のラベンダー祭りなどは、法外な入場料を取って、さらに駐車場は別料金であった。せっかくのラベンダーを商売にするものではない。
鴻巣市には運転免許の違反者講習を行う警察の施設があることから好きになれるような町ではないが、これを機に少し考えを変えようと思う。
川島町から鴻巣市、行田市へと向かう車窓は壮観な田園地帯である。地図を見ると荒川の河川敷ということになる。コスモス畑もすぐ先は荒川である。
荒ぶる川という名なのであるから、昔から洪水を繰り返し起こした河川なのであろう。
以前地元の不動産屋から、地盤がとても弱い土地である、という話を聞いたことがある。どんなに長いパイルを打ち込んでも岩盤にとどかないらしい。しかしそのためか土地は肥沃で、いいコメが取れるそうだ。
コスモス見物の帰りにいつもの公園に立ち寄った。きのう買ったトレッキングスティックを、我がホームコースで試したかったのである。
特別歩きやすいということはないが、ただ思った通り体のバランスを保つにはいい。
1周でやめようと思ったが、2周回ってしまった。そのため綺麗な夕焼けを見ることになった。
筋肉疲れで四苦八苦して歩いているとき、横を通る人から挨拶された。なんとも感じのいい挨拶をする人であった。ただ通り過ぎるというだけなのに、これだけのいい印象を与える人も珍しい。
奥さんと思われる女性が乗る車椅子を押していた。年齢は私くらいか、もう少し上かもしれない。この公園では見かけることもない品のいい、上質な生活を感じさせるご夫婦であった。
このご夫婦も、ほんの何年か前まで、2人揃って元気に過ごしていたのだろうと思う。
コスモスはやはり農家の庭先や野辺にさりげなく咲くのがいい。豪華さを競う花ではない。
野辺という言葉も最近では聞かなくなったが、野辺とはどんなところなのだろうか。
私は野辺を知らないが、多分こんな風景を野辺と言うのではないか、という風景が私は好きである。
富士には月見草が似合うらしいが、野辺はなんといってもコスモスである。(了)
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