老いが進む町

つぶやき

 ぞうさんが亡くなってダークダックスは一人もいなくなってしまった。同じ時代を生きてきた人たちの死は寂しい。

 何年か前に館林の分福茶釜のお寺を訪ねたとき、その近くにダークダックスの記念館のようなものがあった。どうしてこんなところに、と思うような場所であった。

 ダークダックスのコーラスについてはいろいろ評価が分かれるが、捨てた捨てられた、騙した騙された、という男と女の歌謡曲しかない時代に、健康的な歌の楽しさを人々に伝えたことは記憶に残すべきことである。

 聴いていて恥ずかしくなるような歌も多々あった。それは彼らの育ちの良さであるというが、そんなことはあるはずない。

 このところ何週間か、向かいの家のご主人の姿が見えない。親しいつき合いがあるわけではないが、玄関が向かい合っているから人の出入りが良く分かる。

 私が3週間ほど入院していた時、向かいの奥さんから「ご主人、どうかされました」と妻が尋ねられたことがあったらしい。他人のことはよく見ている。

 この町に住んで45年が経つ。
 同じ町にこんなに長く住むことは人生初めてのことであるが、人はこうして歳をとっていくのか、ということを実感する。

 近所の、多分80歳にはなるのではないかと思われる独身男性が、両手に買い物袋をぶら下げて歩いている姿をよく見かける。よたよたした歩き方である。
 この男性に限らず女性も、同じように歩く姿を見かけるようになった。

 買い物は欠かすわけにはいかない。元気に歩けるうちはいいが、重たい荷物を持ってのことである。今にも転びそうに歩いているのを見ると声をかけたくなるが、私の方が声をかけられそうであることに気づく。

 今日も涼しい朝であった。暑さも寒さも突然やってくるのが昨今の天気である。
 血圧は季節の変わり目が一番怖いと医者に脅かされている。患者を脅す医者にいい医者がいたためしはない。

 今朝の新聞が「起用見送りドミノ」を報じている。多くの企業が、ジャニーズのタレントをCMに起用することを見送っている、という内容である。なんとも白々しいことである。

 同じ新聞に31歳の医師の死が報じられていた。中学1年のときガンを発症し、小児ガンに苦しむ子供たちのために医師を志す。国立大学の医学部を現役で合格し、研修医を経て医師になったばかりのことであった。
悔しかったと思う。

 映画福田村事件を明日観に行く予定にしている。実は昨日行くつもりでいたが決心がつかなかった。映画になぜ決心が必要だったのか。
 多分作者が渾身の力を込めて作った映画だと思う。
 人間が人間を虐殺する事実が描かれているはずである。
 知らなければいけないことだが、知ることに怖さを感じていた。
 明日は勇気をもって観に行かねば、と自分に言い聞かせている。(了)

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