韓国の大統領が来日している。徴用工問題など大きな問題を抱えて、日韓関係は最悪な状態だと言われているが、私の関心はそのような難しいことにあるのではなく大統領夫人のことである。
大統領が一目惚れしたという美貌の持ち主である。
確かに美人である。しかし遠慮なく言うと、どう見たって不自然である。
韓国は整形大国と言われている。女性アイドルグループを見るとみんな同じような顔をしている。少し違っているとしても傾向は同じなのである。
女性だけに限らず男性もほとんどしているという。どういう社会なのだろうかと思うが、日本にいては判らないことであろう。
日本は韓国に比べれば整形後進国ということになるらしい。芸能人などは整形を当たり前のようにしているようだが、日本の場合は罪悪感と言っては言い過ぎかもしれないが、後ろめたさというものが整形にはある。「あの人整形?」と言うのはもちろん誉め言葉ではない。
今をときめく女優でありモデルでありグラビアアイドルであり、抜群の美貌とスタイルを誇る女性の卒業写真がネットに載っている。詐欺ではないかと思うほど、今の顔と全く違う。
今の整形のことも、昔の整形のこともよくは知らないが、昔は鼻を高くすることが整形であったような気がする。
日本人は特に鼻の高さにこだわったようである。多分外国映画のせいではないかと思う。日本人が二枚目を言うときは、何が何でも鼻が高くなければ、ということがあった。
そういう訳からか、日本人の女性は鼻を高くすることに熱心だった。
しかしそうは簡単なことではない。美人になるどころか国籍不明の顔になってしまう。鼻が高いことと彫の深い顔はセットなのであるが、彫の深さは残念だが整形によってもどうすることもできない。
昔の女性歌手や女優さんが歳をとると、みんな同じような顔になっている。鼻筋だけが妙に細く皺がないのである。昔某国の第3大統領夫人だったという女性も同じような顔をしている。銀座や赤坂のホステスさんたちと、同じ時代の人であることがそれで分かる。
10代のころ私と同じ歳の女性歌手がいた。アメリカのポップス曲をパンチのきいた声で歌った人である。
その時は美人歌手としてデビューしたわけではない。ダイナマイト娘とも言われたぐらいだから、ボーイッシュな感じである。流行歌であるから数年で人気はなくなり忘れられた。
しかしそれから数年後、22歳の時、とてつもない美人となって歌謡界に再デビューした。フランス人形のようである。
大学生たちはその美しさに熱狂した。再デビューで歌った歌は「人形の家」である。
作詞はなかにし礼氏であるが、イプセンの人形の家と関連を持たせたのかどうかは知らない。ともかくアヒルが白鳥になったのである。
当然整形が取りざたされたが、本人は否定した。
それから何十年か経って、テレビの懐かしのメロディで彼女を見た。もちろん人形の家を歌ったが、あの美しさは消えていた。
石膏のように表情がない。ここに書くのも気の毒なほどである。
人形の家の歌詞が、今となってはこれがまたつらい。予め断っておくが、決してこの稿のオチとして掲載するのではない。
「顔も見たくないほど、あなたに嫌われるなんて……」
これは悲劇である。整形は一人の歌手に人生の絶頂をもたらしたが、人生の悲劇ももたらした。
表情のない顔になったが、悲しそうな顔に私には見えた。2年前に亡くなられた。晩年は社会活動にも熱心だったと聞く。
韓国大統領夫人が歳をとったらどうなるのか。いつまでも自然に暮らされることを願わずにはいられない。
顔のために人生を狭くしていた女性が、整形によって新しい人生が開けることは素晴らしい事かもしれない。日本の社会もそれを当たり前に認める社会になるのだろう。
しかし我が家はずっと「自然のままがいい、自然のままがいい」と暮らしてきた。(了)
コメント