私も少し前まで、世間から先生と呼ばれる仕事についていた。
専門家ということになるが、たいした専門であったわけではない。
その資格試験は、合格率2パーセントを切る超難関試験と言われているが、試験が易しい割には実入りがいいという宣伝もあって、失業者たちが殺到したというだけことである。実質合格率は40パーセントくらいになる。
よほどの人でもない限り、誰でも受かる試験であり、頭のいい人は受からない試験である。頭のいい人は試験内容が馬鹿らしくなって、やる気にならないらしい。
専門家の前置きが長くなったが、自分の経験を一般化してはいけないが、専門家は本当に専門家なのか、ということがある。
私の住む町で営業している不動産業者の営業マンの人たちの間で、知らない者はいないという歯医者がいる。
この歯医者は金儲けのことしか考えていない。不動産業者に有名だというのは、副業で不動産屋をやっているからである。
私がこの歯医者にかかった時保険診療ではなく、いわゆる自由診療を進められた。断ればよかったが、歯医者にそう言われては考えざるを得ない。4本で数十万円になる。
玄関を出ると女性事務員が、次回お見えになるとき現金でこの金額を持参して下さい、と追っかけてきた。振り込みではダメです、ということを言いたかったらしい。念のいった歯医者である。
この歯科医についてはまだ話がある。セラミックを入れることにしたのだが、終わってみると少し出っ歯になっている。
それを指摘すると、「私がやったわけではない」とその歯科医師は言うのである。
セラミックの装着は歯科衛生士か技巧士か知らないが、そこの医院の若い女性がした。
確かにその医師本人がしたわけではない。しかしそれを「私がやったわけではない」と言うものだろうか。
この話は作り話ではなく事実なのだが、この話を人に言っても信じてもらえない。それだけ異常な話なのである。
専門家と呼ばれて、それで食べていければそれ以上専門家になる必要はない。手慣れた手つきで仕事をこなし、金を数えることが楽しみとなる。
そんな専門家というものが世の中にはいるのである。もちろん私のことを含めてである。
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