もし、不動産の登記をすれば自分の権利を国が守ってくれる、と登記について理解しているようでしたら、お手数をかけますが、この先読んでみてください。
法律のことですからかたい言葉が続きますが、大して面倒なことでも難しいことでもありません。
まずなりより登記は、権利の証明制度ではなく単なる公示制度に過ぎない、ということを知ってほしいのです。国民の権利を守るということなどは全くありません。
「登記簿には所有者誰それとして、権利者の住所と氏名が記載されているから権利を証明しているではないか」と思われるかも知れませんが、あれは権利者を証明しているものではありません。
(現在は登記はコンピューターになりましたので登記簿とは言いませんが、とりあえず使い慣れた言葉で続けます)
登記簿に権利者と記載されているのは「この者が権利者であることを証明する」ということではなく、「この不動産について、自分が権利者であると名乗り出た者は次の者である」ということを証明しているのです。
そんな名乗り出ることなど意味がないではないか、と思いますが、犬や自転車の登録と同じです。意味がないということ はありません。とりあえず所有者らしきものが分かるということは取引社会においては便利なものです。登記が公示制度というのはそういうことなのです。
不動産の権利というものは、登記して初めて権利者になるということではありません。登記の有無に関係なく権利者は権利者です。国に権利の証明制度というものは存在しないのです。
それでは権利者であることが不安ではないか、何も証明してくれるものが無いなら、どうやって自分の権利を主張したらいいのか、という疑問が湧くはずです。
所有権という権利は、所有者から買ったとか、建物を新築したとかによって取得するものです。誰の許可も届け出もいりません。
権利というものは、誰かがその権利を否定しなければ権利者であるということです。登記は、誰かがその権利を否定しない間公示する、という制度です。
もし登記を受けている所有者に、誰かがその土地は俺のものだと訴えたら、もちろん裁判になります。登記しているかといって、登記名義人が保護されるということはありません。
訴えた者が真実の所有者であって、登記をしている者が、例えば真実の所有者を騙して登記をした、ということでしたら、登記は抹消され、真実の所有者が登記されることになります。
登記には無効な登記が無数に存在しています。例えば認知症の所有者を騙して登記すればその登記は無効です。
権利者として名乗り出るには要件が必要ですが、その要件は自分が真実権利者であることを証明する必要はなく、形式的 な資料を揃えれば登記されることになっています。
登記とは真実の権利者を公示しているものとは言えないのです。
別項で権利証について書くことにします。
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