若い頃、建築会社に勤めていた時の同僚で女房自慢をする男がいる。
彼が結婚するときにその女性に会った事があるが、まだ20歳を少し過ぎたくらいの、なかなかの美人で、気立ての良さそうな人であった。
なんでこんな女性がこんな男と結婚するのかと不思議でしょうがなかった。
郷里でお見合いをしたらしい。女性は結婚に積極的であったようで、お見合い後、彼のアパートを泊まり込みで訪ねてきて、彼はその対応に慌てたという話を彼から聞いたことがある。
彼は当時30を過ぎていたがすでに頭髪はほとんど無く、見るからに気の弱そうな、見方によっては人の良さそうな、覇気のない、あまり仕事も出来そうもない印象を人に与える人であった。もちろん女性にモテるような男ではない。
子会社をたらい回しにされ、何年か前に定年退職したが、まったく向上心というものを持つこともなく、会社の処遇にただ従順に営々と勤め上げたようだった。
彼とは私が建築会社を退職して以後、ほとんど会うことのなかったが、たまに年賀状をもらい、返事を出すのも面倒なので電話で済ませたが、いつも彼の口から出るのは女房自慢であった。要は、妻がよく尽くしてくれるというのである。
多分彼は恋愛の経験はなかったと思う。自分の性格や風貌などから、女性と付き合うとか、結婚を考えるとか、そのようなこととは無縁の生活を送ってきたはずである。そんな彼にとっては信じられないような結婚生活であったようだ。
女房自慢をする彼の言葉に、愚直と言うより、「この男はバカではないか」と感じた。
この奥さんのことをときどき考えることがある。なぜあんな男との結婚を決めたのか、なぜあんな男に尽くしたのだろうかということである。
言いようによっては大変失礼なことであるのは承知している。
結局、結婚して夫に尽くすということが女性の役割だ、と信じ切っている女性がいるということである。
田舎暮らしをしていて、東京のサラリーマンの奥さんになるということの憧れもあったかもしれない。男としての魅力があった、と女性は言うかもしれないが、男の魅力が分かる女性ならばとっく別れているはずである。
この知人と全く同じような結婚をした知人がもう一人いる。この知人は、女房自慢をする男と同じように、なにをやっても仕事の出来ない愚図な男であったが、勤め先を転々としたことによって生活が安定していなかった。
同じ郷里の人とお見合い結婚をしたが、この女性も男に尽くす人であった。
この知人はこの女性と結婚していなければ生活保護しかなかったはずである。
男に尽くす女性というものが存在しているのである。男を利用することしか頭にない女性もいるが、こういう女性もいるのである。
たまたまこの2人の女性は、東京からすれば田舎の女性ということになるが、田舎の女性だから男に尽くすということではないだろう。男に尽くすということは、本を読んで身につくものではない。
二人の知人をダメな男として書いてきたが、私も含めてダメな男というのが世の中には結構いる。
そういう男に嫌気がさして別れていく女性が正常だと思うが、別れないどころかそんな男に尽くしてしまう女性がいる。
それは理屈でも男に対する愛情でもなく、そういう習性の女性がいるということである。女性を褒めているのではない。習性なのである。
女性に裏切られる男もいるが、棚ぼたのような男も世の中にはいるのである。
コメント
なんとラッキーな男性達でしょう。
結婚年令にもよりますが
結婚は人生そのものにも思います。
二人の男性は社会的、男性としての魅力には
あまり恵まれてはなかったようですが
人を騙したり、利用したり、
蹴落としたりはしない善人?に見えます。
だから人生唯一のご褒美?
女性お二人は親から薦められるお見合いを
自然に受け止められる結婚適齢期でも
あったのでしょうか?
自分の頃もそうでしたが20代で結婚する
のが当たり前の時代(特に田舎では)
女性達は適齢期のうちに親がすすめ
認める結婚に歩み出したのかも知れません。