若い時いいのと、歳を取ってからいいのとどっちがいいか、という話を耳にすることがある。
若い時には歳を取ってからのことは分からないから、この話は歳を取った人が言う言葉ということになる。それも歳を取っていい生活をしている人の感想である。
人生、歳を取ってからいいのがいいのに決まってる。
若い頃、酔った勢いで易者に見てもらったことがあるが、歳を取ってからがいいという見立て。今がよさそうに見えないから、歳を取ったらいいと言わなければ見料もとれない、ということだろう。
人生顧みて思い残すことはない、ということをまだ言う歳ではないが、思った以上の生活をしてきたということである。
元気なうちに人生を顧みて、思った以上の生活をしてきたと懐かしめることは幸せなことである。
「人が見れば 名も実も得て 心豊かな 暮らし振り 望み以上で 来たと思う」と小椋佳さんは歌ったが、「名」は得なかったが、中卒の印刷職工として始まった人生にしては、豊かな人生を送ってきた。
なによりも夫婦二人とも元気でいるということである。どちらかが病に倒れたとすれば、その生活を想像することは容易なことである。そのようなことが近所にもテレビにも溢れている。
大変なことになるだろうなと思うが、今のところそういうことにならずに済んでいる。ありがたいことである。
子供も孫たちもみんな元気で暮らしている。こういうことも実にありがたいことである。死に行く時が来たとしても、この世に心残りが無いならばなによりもありがたいことである。
朝風呂に入り、湯から上がれば一汁五菜くらいの温かい食卓の用意ができている。
誰に気を使うこともなく、毎日の便通を清潔なトイレで済ますことができる。これほどの幸せはない。
毎日のようにウォーキングを兼ねて出かけ、弁当を食べたり、おいしい店に入ったり、極端な浪費さえしなければまあまあの貯えもある。
広い家に夫婦二人の生活。広い家だが広すぎるということはない。夫婦別室。それぞれの趣味の部屋。夫婦二人が暮らすには広い空間が必要。
家内が寝室に上がる時、「生きていれば明日また会おう」と声をかける。
運のいい人生だった。明日のことは分からない。毎朝、障子がだんだん明るくなるのを見るのがうれしい。
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