昏睡と意思確認

つぶやき

 ピーコという人が死んだらしい。
 「おすぎとピーコ」という、名前というのか芸名というのか、その名を知っているし、以前テレビで見たこともある人だが、タレントであったのか漫才芸人だったのか、よく知らない。

 訃報記事が結構大きなスペースだったので、そんな記事枠で報ずるような人だったかなと思うような記憶しかない人である。

 その記事の中で2つ気になったことがあった。一つは敗血症、もう一つは認知症。

 3年程前、「ほっといたら敗血症で死ぬよ」と、女医さんに脅かされたことがある。以来この言葉に反応するようになった。タレントの渡辺徹さんも敗血症で亡くなっている。

 しかしこの病気についてほとんど知識がない。
 「敗血症とは、感染症に対する制御不能な生体反応に起因する生命を脅かすような臓器障害のこと」と、家庭の医学書にある。

 子供のころから聞いてきた言葉で言えば、「体中に毒が回って死んでしまう」ということである。治療成績も悪く、非常に死亡率が高いらしい。

 このところ認知症という言葉を聞かない。近所に認知症の人は多分何人もいると思うが、表には出てこないし、ほとんどの人は施設に入っているからかもしれない。

 ピーコさんは75歳くらいで発症したようだ。おすぎという兄弟の人も認知症らしい。

 兄弟とも認知症ということは、やはり遺伝的なものが認知症にはあるのだろうか、と思う。75歳くらいで発症というのは特別早いということもなく、遅いということもない。変な話だが、普通ということになる。

 しかし「普通に背は伸びている」ではなく、「普通に認知症を発症している」と言っては悪い冗談になるが、だがしかし、なるような年齢になるとなってしまうというのがやはり怖い。

 介護施設に行くこともなくなった。現役の頃、本人の意思確認の必要から各地の施設に行っていたが、世の中にはこういうところがあるのかと、行く度に気持ちが落ち込んだ。

 施設に入るような人たちであるから、ほとんどのケースで意思確認はできない。裁判所に後見人を選任してもらうしかない。

 それが結構面倒で時間もかかることから、親族や不動産屋などから、「なんとか確認をしたことにしてくれ」と頼まれる。

 あるとき、本人がいるという個室に入ったら、弟という人がベッドの枕元に立っていた。本人であるというお姉さんは、口を開け、目を閉じてベッドに横たわっている。昏睡ということではないか。
 意思確認をしようがないが、弟さんが確認手続きをしてくださいという。

 なるべく必要事項を簡略にして、ベッドに横たわるお姉さんに声を掛けたら頭を縦に振っている。
 間髪入れず、「いま返事をしていました」と弟さんが言う。
 弟さんが持ち上げたベッドを降ろしていた。

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