手が回らない

つぶやき

 きれいな話ではないが、お尻に手が回らなくなった。つまり排便して尻を拭けないのである。

 生来の短足で、手も短い日本の在来種であるから、歳と共に体が硬くなればそういうことになる。
 
 歳をとると、硬くなって欲しいところは音沙汰がなく、硬くなっては不便なところが硬くなる。

もちろんウォシュレットであるから洗えるが、拭くことができない。

 乾燥を押せばいいのだろうが、待っているのがかったるい。
 孫の手を思い出しあれにトイレットペーパーを巻いて拭きとればいい。やってみたが、しかしちょっと痛い。

 家庭用品の売り場で、先端にスポンジの付いている掃除用具があった。早速って帰り、スポンジ部分にトイレットペーパーを巻きつけて使ってみた。パーペキである。

 2年前、入院が続いていた頃は便秘を繰り返していた。1週間は便通がない。しかしほとんど便秘の苦しさということを感じたことがなかった。

 人生初めて浣腸を経験した。話には聞いていたが使ったことはない。

 自分でやってみたが届かない。いろんなところにあたっているうちに先端が曲がってしまう。女房の手を借りることになった。

 便意のない便秘はまだいいが、そこまでそうなのに出ないというのは辛い。

 がんとか脊髄症とか患わったが、なんとか元気で生きている。
 年の割には髪の毛が、もう要らない、というほど残っているから若見えるらしい。

 しかしハタと考えた。これで女房がいなくなったらどうなる
 女房がいなくなったら困ることについては十分実感しているが、浣腸ができなくなることを忘れていた。これは困ったことである。

 先日介護保険更新の手続きに係の人が訪ねてきた。
 一人で風呂に入れるか、トイレに行けるか、布団から起き上がれるか、食事は一人でできるか。

 質問されていて、元気であることを強調した方がいいのか、一人では何もできないような印象を与えた方がいいのか、迷ってしまった。
 
 トイレはひとりで行けるが、浣腸は一人ではできないことを伝えるべきだったか。
係の人が帰ってからしばし考えた。

 

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