建 築 費

つぶやき

 大学卒業後、マンション建築を専業とする建築会社に就職した。大阪が会社発祥の地ということで、東京の本社内でも大阪弁が闊歩していた。

 毎週月曜日に社員全員が最上階の集会室に集まり朝礼がある。社長は全く話をすることはなく、いつも会長が不愉快な大阪弁で訓辞をしていた。

 朝礼は社員の表彰の場でもあった。成績を上げた営業マンや、建築用地取得のノルマを達成した不動産部員なとが金一封とともに表彰される。

 建築現場の工事所長が表彰されたとき、その理由が粗利益率60%を達成した、ということであった。その所長はその場で、一現場所長から建築部長に昇格した。

 私は、よくやったな、などということは思いも浮かばず、とんでもない手抜き工事をしたのだろうと思った。

 それから1、2年後、表彰の対象となった建物(マンション)の欠陥が問題となり、会社もそれに対応したが、建築部長の降格はなかった。

 30歳を過ぎて住宅建設の会社に転職した。社員30名くらいの会社で社員も会社も若かった。
 集客は都内の1か所か2か所の住宅展示場である。

 私は営業職でも経理関係でもなかったので会社の財務状態は全く分からなったが、不思議なのは、この程度の受注件数でよく会社をやっていけるな、ということであった。

 ある日社長が工事担当者を表彰した。粗利60%の話であった。

 建築関連の費用にはいつも疑問が残る。昨年家の外回りの改修工事をしたが、あまりの高額に驚いた。

 わずか1メートル四方に深さ5センチほどの土を入れただけで10万円が計上されていた。後で分かったことだが下請けの見積もりは5万円であった。

 他の工事もこんなやり方で工事費の見積もりがされているのではないかと疑念がわいた。信頼した業者であったが、彼にしてみれば当たり前のことのようで、信頼に応えたつもりでいるようだった。

 住まいから車で数分のところに住宅展示場がある。その中に大手不動産会社の名を冠したリフォーム会社がある。

 我が家も築25年、12年目に屋根や外壁、室内を改修したが、またその時期が来たらしい。この会社を訪ねてみたが曜日が悪かったのか担当者がいないという。出直すことにした。

 ところが知り合いの人の話によるとこの会社の評判が極めて悪い。耐震工事など全くのインチキだし、リフォーム代はあってないようなものだという。大手不動産会社の信用をバックにしたインチキだという。

 インチキとは何事か、とクレームがあるかもしれない。粗利6割のどこが悪いというクレームもあるだろう。しかし仮に5,000万円で建てた家の原価が2,000万円であってはどうも納得しようがない。

 信頼できる業者を選ぶことがまず大事だという。そんなこと言われても、どうしたら信頼できる業者を選ぶことができるのであろうか。適正な価格、と言ってもなにが適正か分からない。大手だからインチキはない、とは言えない。

 建築に関してのことではないが、以前司法書士の報酬が法務局の懲戒事件になったことがある。開業間もない司法書士が、不動産屋へのリベートを登録免許税に上乗せしたのである。

 素人には分かりにくい免許税をごまかすとは悪質な話だが、それがバレて懲戒となったのである。

 その司法書士の言い分は、そうしなければ事務所を維持できなかった、と言うことであった。

 これは物の値段ではないが、値段とか価格とか報酬などというものは、こういうものであるということを知らされる。

 ここに言うのもためらうが、人間バレなければ誰でも悪いことをする。しないまでも誘惑にかられる。どこからもいちゃもんが付かなければやりたい放題となる。

 前首相の菅さんが言っていた携帯電話の値下げはその後どうなったのであろうか。電話会社が自ら値下げをすることはあり得ない。

 いろいろ考えると結局は自分の体に響いてくる。老いた人生、鷹揚に生きていきたいと思うが生来の短気は収まりそうもない。忘れるに限る、のかもしれないが、認知症になってしまっては元も子もない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました