寝ることは安全ではない

つぶやき

 春になって、暖かくなることの嬉しさは、花々や新緑を見ることだけでなく、今年の冬も大地震がなかった、ということである。

 私は生まれてからずっと関東に住んでいるから、今まで大きな地震は経験したことがない。

 熊本地震の2回の震度7は夜であった。4月とはいえ夜はまだまだ寒い。住民の人たちは大変な思いをしたことだろう。私の学生時代の友人もこの地震で亡くなったことを知った。

 私はあの東北大震災以来、寝るということが正直言って怖いのである。
 寝ることは健康に大切なものであることは十分わかっているが、考えてみると寝ることは無防備である。

 大地震が起きれば布団をかぶって震えているしかない。
 2階が寝室であるから階段が崩れるようなことがあれば表に飛び出すこともできない。
 真冬であればどんな事態になるか、想像することが簡単なことであるだけに心穏やかにはいられない。

 緊急地震速報は知った方がいいのか、知らない方がいいのか。知ったところでせいぜい身構えるぐらいのことしかできない。

 気象庁も、大きな揺れに注意してください、と呼びかけるが、注意したところでそれだけのことである。

 緊急地震速報はいいのか、よくないのか。子供達があの音がトラウマになっているという話をよく聞く。私などはあの音を聞いただけで、腰に鉛が巻き込まれたような鈍痛を感じる。

 東北大震災の日以後、しばらく私は2階の寝室で寝ることができなかった。
 1階のリビングの長椅子に洋服を着たまま寝ていた。

 家内はパジャマに着替え自分の寝室で寝る。大した度胸だと本当に感心した。あれは鈍感とか無神経とかそんなレベルではない。確かに肝っ玉が据わっている。私がどんなに偉そうなことを言っても、あの時寝室で寝る勇気はなかった。

 あまり地震のことは触れたくない。いや本当はもっと地震のことに触れて自分の不安を取り除きたいのだが、ものには程度というものがある。自分の不安を口にすることはいいことではない。

 寝ることは安全ではない、ということで書き始めたこの稿は、地震で始まり地震で終わるつもりでいたが、もう一つ、寝ることは安全ではない、ことに気が付いた。強盗である。このところルフィとかいう強盗団の報道がない。

 悪い連中が全部捕まったとは思えないが、別に悪の本拠があるらしいとの話もあるから、ほとぼりが冷めるのを待っているのかもしれない。

 しかし強盗という犯罪行為が分業で行われるとは想像もできないことである。犯罪というのは大体仲間割れするし、バレることを恐れて単独犯、あるいはせいぜい2人組というところだが、この事件は全く違う。

 家に侵入して家人と鉢合わせになった時どうするか。その場合の対応まで電話のやり取りで実行犯に指示するという。

 人を殺めるということも、電話の声に従ってやったということでは罪の意識も薄いのではないだろうか。そもそも強盗という犯罪を、ビジネスとして行うことに罪の意識はない。

 誰が考えた犯罪なのであろうか。
 振り込め詐欺に暴力団が関与していることは事実であるらしい。
 
 一連の強盗事件は、振り込め詐欺がより凶暴なものになったものだ、との指摘がある。振り込め詐欺の受け子が強盗の実行犯になるということである。

 深夜家に侵入して金をとってくる。人を騙して受け取るか、人を脅して受け取るかの違いだけで大したことはない、ということなのだろうか。

 どうして日本はこんな社会になってしまったのだろう、などと考えることではない。こんな社会になってしまったのである。

 昔は家にカギを掛けるなんてことはなかったのだが、と昔を懐かしむだけの政治家しか日本にはいないのである。

 森総理の時に提唱したE-ジャパンなる情報政策はどうなっているのだろうか。警察は犯罪者より情報技術を持っているのだろうか。

 はんこ業界の利益を保護するため、官民とも世界に後れを取った日本の情報技術である。本当に本腰を入れなければ何も進展しないのではないか。

 振り込め詐欺などの詐欺事件が世間を騒がすようになってずいぶん経った気がするが、犯罪が社会的存在として定着した感がある。

 犯罪が定着するなどおかしな話である。犯罪者は毎日通勤するようにアジトに通っている。そんな場面をテレビで見た事がある。
 
詐欺事件の被害額は減っているのであろうか。しかし減ったところで被害額は大きい。なぜこんな犯罪を根絶できないのだろうか。

 コンピューター社会と言うのかIT社会と言うのか、良く分からないが、今までの社会とは180度どころか2回転半くらい違う社会が来ているのだと思う。年寄りがついていける社会ではない。

 チャットGPTとかいうものを開発したアメリカ企業の責任者という人が、岸田総理大臣と面談していたが、めずらしい光景である。

 これからは裁判制度も、行政の在り方も、なにもかも大きく変わっていくのであろう。なにより国会議員が要らなくなるのではないか。国会審議に意味があるとは思えない。

 もはやコンピューター技術は人間の頭脳を超えているようだから、未来社会を人間が想像することはできなくなっている。チャットGPTというのもそれを禁止する国もあると聞く。とんでもない時代になりそうなことだけは分かる。  (了)

コメント

タイトルとURLをコピーしました