冤罪はまた起こる

つぶやき

 「冤罪また起こる 過ちを認めず組織防衛」
 大川原化工機事件に関する今朝の毎日新聞社会面のタイトル。
 
 冤罪は今まで一度も起きていない、というのが検察・警察の主張。
 冤罪などあり得ない、という主張もあった。

 「自分たちのやることには間違いがあるはずはない」という、どうしようもないほどの思い上がりで固まっている。冤罪はまた起こる。 

 大川原化工機事件は、警視庁公安部が犯罪をでっちあげた事件。
 逮捕された3名のうち2名は保釈が認められるまで1年近く拘置所に拘留され、もう1名は勾留中に進行性胃がんにより、起訴取消を知ることなく亡くなった。実刑判決を受けたと同じである。詳しいしい経緯を知っていなければならない。

 違法捜査をしたのは警視庁公安部外事1課5係。海外への不正輸出を取り締まる部署。

 捜査人は20名。その係長(警部)は、日頃こんな言葉で部下に発破をかけていたという。
 「大企業だと警察OBがいる。会社が小さすぎると輸出自体をあまりやっていない。100人くらいの中小企業を狙うんだ」

 大川原化工機は社員約90人の中小企業。警察OBも雇っていない。条件に一致していたことになる。

 何故大川原化工機は狙われたのか。その原因は2017年春にあった民間企業の輸出管理担当者向けの講習会にたどり着くという。

 5係の捜査員も参加し、噴霧乾燥機が2013年から国内で輸出規制の対象になったことを知る。「新しくできた規制での立件第1号は注目されるので調べることにした」。まさに公安部。スパイのようであり、恐ろしいところである。

 噴霧乾燥機は液状のものを熱風の中に霧状にまき、水分を蒸発させて粉末にする機械。インスタントコーヒーなどがいい例。
 国内では10社ほどの狭い業界で、大川原化工機はそのリーディングカンパニーともいえる会社。その会社が狙われた。

 噴霧乾燥機が輸出規制の対象になっているのは、悪用すれば生物兵器の製造に転用される恐れがあるためである。

 生物兵器を作るには作業者の感染を防ぐ機能が欠かせないため、「内部を殺菌できるもの」が輸出規制の対象になる。
 国際基準では殺菌には「化学物質」を使うと定められていた。

 ところが国内で適用される経済産業省の輸出規制省令は表現があいまいで殺菌方法を限定しておらず、解釈の余地が生まれた。

 公安部は捜査の序盤でこの事実をつかむ。
 その際の係長の言葉を複数の捜査関係者が覚えている。「ザル法だ。解釈を作れるのはチャンスだ」

 そこで公安部が作り上げた独自の省令解釈が「乾熱殺菌」。付属のヒーターで装置内部を熱し続ければ菌は死ぬというもの。それを理由に不正輸出として2020年3月、役員3人を逮捕する。 
 この「乾熱殺菌」による効果は結果として否定されることになる。

 以上は毎日新聞の連載記事をまとめたものである。
 新聞記事であるから筆者の主張がある。全部正しいのかどうかは分かりようがない。しかし結果から、大川原化工機が不正輸出を行ったとは考えにくい。公安部の事件捏造に納得するものがある。

 しかし驚くことに国家賠償訴訟の2審では、この時代に罪刑法定主義を持ち出して判決を言い渡したらしい。そんな刑法の基本中の基本が、いわば検察と警察を被告とする賠償裁判の判決理由になるとは、検察・警察が刑法の基本を守っていないことの深刻さを示すことになった。

 

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