夜間大学に通っていた頃、同級生とラーメン屋に入った時、彼がラーメンとライスを注文するのに驚いたことがある。
ラーメンとライスをどうするのか。ラーメンをおかずにしてライスを食べる。
私には理解できない食事であった。
彼は大学近くの新聞販売店に住み込みで働いていた。確か静岡県の出身と言っていたが、年齢は私より2歳くらい上だったようだ。
昔、新聞販売店に住み込みで働き、夜学に通う学生が多かった。
帰りが遅いと食事は無くなってしまうらしい。彼は私に、「食事をどうしているか」と聞くが、はじめその意味が判らなかった。
私も夜学に通う貧乏学生であるが、母と一緒に住んでいるので食事に困ったことは一度もない。
昔は、暮れ正月は独身者にとっては命がけであったという。今のようにコンビニなどはなく、食堂は休みになるし、下手をすると正月が明けるまで腹を空かせることになる。
何年か前、クラス会の案内書が来たが出席しなかった。それから何日かして、クラス会の写真と出席者の今を伝える手紙、それに消息の分かっている同級生だけの名簿が入っていた。
ラーメンライスを食べた同級生は亡くなっていた。
卒業してから来年で55年。今までラーメンライスを注文したことはない。
このところ彼のことを思い出してしょうがない。ほとんど付き合いがなかった同級生であるがどうしてなのか。ラーメンを食べる機会が増えたからかもしれない。
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