ジャニーズ事務所の前の社長によるとされるいわばセクハラ問題。市川猿之助の両親の死亡と本人の自殺未遂のような事件。あり得るな、というものと、不可解と言うべき事件が芸能界で続いている。
ジャニーズ事務所の前社長の件は性加害問題と言うらしい。NHKの番組が「ジャニーズと性加害問題」として問題を指摘した。
その番組の中でコメンテーターの人がこの問題に対してメディアが怠慢であることを指摘した。この問題から逃げずにきちんと取り上るべきだという。民放の特定局を名指しで批判したらしい。
このNHKの番組も、外国の放送局が最初に取り上げたことから問題意識を持ったようで、問題を深く掘り下げた内容にはなっていなかったようだ。
ジャニーズ事務所と言えば長年にわたって男性アイドルを輩出する、とてつもなく大きい芸能プロダクションだそうである。
そんな事務所の経営者が若い男性アイドルに対して性加害をしてきた。民放のワイドショーなどでは垂涎の話題ではないか。なぜ取り上げないのか。理由はすでに周知のことのようである。
市川猿之助と聞いて思い出したのは、女優さんと結婚して大仕掛けの歌舞伎をした人のことである。その人は3代目の市川猿之助であって、今回の人は4代目であることを知った。
新聞が家系図まで用意しているから分かりやすいが、3代目と4代目は親子関係ではなく、叔父・甥の関係だそうである。なぜ3代目は自分の子に名跡を継がせなかったのだろうか。
車の中で4代目が襲名したときの記者会見の様子が映っていた。3代目から「継いでほしいと頼まれた」と言う言葉が印象に残った。
「猿之助という名前は神様に等しいような憧れ」と言う者がその神様から「継いでほしいと頼まれた」と人前で言うものであろうか。頼まれたからなった、という感じである。なにかいろいろ事情がありそうな言い方である。
歌舞伎界も中心となるべき役者が次々と死んでしまった。先代の市川團十郎、中村勘三郎、坂東三津五郎。みんな死ぬには若すぎる。勘三郎さんは57歳である。まさに絶頂期に亡くなったことになる。
ジャニーズ問題を引き合いに出すことになるが、メディアと告発の問題は古くから言われてきたことである。メディアは公器と言われるが、どういう意味をもっての公器であるのか、長いこと言われている割には判然としない。単なる理念に終わっている感もある。
ジャーナリズムとメディアをどう理解すればいいのか私にはわからないが、メディアは不正な事実を社会に知らしめる機能を果たしてきた。人々はメディアによって不正の存在を知る。
しかしメディアは公器と言うと同時に商売である。公器と商売は、どう多弁を弄しても両立することはあり得ない。ジャニーズ問題に対するメディアの対応は、商売としてのメディアを優先させたということなのであろう。
誰も自分の不利になることをやるはずはない。自分に不利にならなければ社会の公器を語り、不利になると思えば沈黙する。これがメディアであり、メディアに限ったことではない。それで回っているのが社会である。
もっときちんと対応すればもっといい社会になるはずだが、それができないのが人の社会のようである。30年はもつ電気製品を作ることはできるらしいが、そうしたら企業がもたないらしい。そういうことになっている社会である。
若い頃ある団体を告発したことがある。衆議院社会労働委員会で私の告発を受けた議員がその団体の監督官庁である労働大臣を追及したが、「浜の真砂は尽きぬとも 世に盗人の種は尽きまじ」と大臣は答弁して終えた。
私はその答弁に憤慨したが今にして思うと、そのようにしか答えようがない、ということなのだろう。さすが大臣になる人である。人生の何たるかが分っていた。
市川猿之助さんは一家心中らしいという報道があった。一家心中して生き残った人はつらい人生を送るだろうなと思う。(了)
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