ドジャース優勝

つぶやき

 野球がこれほど面白くスリリングなものとは思わなかった。ネットには「吐き気がするほど興奮した」という投稿があったがその気持ちよく判る。

 まちがいなく日本人選手の活躍で、ドジャースはワールドシリーズに優勝した。
 日本人にとって野球はメジャーリーグということになった。日本シリーズはどこが優勝したのか新聞もテレビも報じていない、ということはないがそんな感じである。

 メジャーリーグは以前、野茂や松井が活躍していた頃はたまに見ることがあったが、なんとなく翻訳を通じてでないと判らないようところがあった。本場と言ってもやはりアメリカの野球という目で見ていた。

 だが今回のワールドシリーズは、選手たちが外人ではなくみんな日本の選手ではないかと思うほど、とても人間的で親しみをもって見ていたように感じる。何度も見ているうちに選手の名前と顔を覚えたからかもしれない。

 しかしこれを劇的と言うのだろうが劇的すぎる。このような試合はこれから二度と見ることはできないのではないだろうか。

 100球近く前日の試合で投げたピッチャーが翌日登板することはありえないらしい。しかしロバーツ監督は逆転勝利に向け、ピッチャーは山本しか考えられなかったようだ。勝てば山本にはかつてない最大の賛辞が寄せられる。それと心中する気だったのかもしれない。
 
 大谷が打たれて3点を失い、膝に手を当ててうつむく姿を初めて見た。
 ドジャースの連覇は風前の灯。

 塁を埋めてもなかなか点が取れないが、8回、9回に起死回生のホームランで同点。9回に打ったのはそれまで打率が1割にも満たないロハスだった。

 そして11回、ピッチャー山本の女房役、キャッチャースミスのツウアウトからの勝ち越しホームラン。出来過ぎである。

 その裏ブルージェイズ先頭打者ゲレーロが二塁打。4番打者がバントで走者を三塁に進めて次の打者はストレートのフォアボール。ワンアウト一塁三塁、一打逆転サヨナラのピンチだが、山本の表情は変わらない。5番カークをセカンドゴロに打ち取りダブルプレーゲームセット。
 
 ホントかよ、と言いたくなるような逆転勝ち。長嶋さんの「野球はメイクドラマ」を思い出す。
 さすが長嶋さんは本場の野球というものを知っていたのだ。だが「メイクドラマ」は英語圏では通じないらしい。長嶋さんがアメリカで野球をやらなくてよかった。

 大谷や山本がドジャースに入団して以来、選手たちが大谷や山本の礼儀正しさや人間的な魅力を語ることが多い。

 日本のメディアがいいネタとして特に取り上げるから目にするのかもしれないが、それまでメジャーリーガーは自分の成績のことだけで、チームメイトのことなど気にしないものかと思っていた。

 第3戦が延長18回までもつれにもつれたとき、ピッチャーは底をつき、救援投手がいなくなってしまった。

 そのとき前々日の試合で完投勝ちした山本がブルペンに向かい投球練習を開始した。トロントの球場は一塁のポジションからブルペンが見える。

 最終戦のときと同じことが起きようとしていた。一塁手フリーマンはチームのため尽くそうとする山本の姿に感動したらしい。18回裏フリーマンは劇的サヨナラホームランを打つ。

 このワールドシリーズ、日本人好みの人情劇のような展開であった。
 耐えて耐えて、最後は正義の味方が勝つ。
 
 スポーツは勝つ者負ける者。だが負けた者は悪人ではない。それが見ていてつらい。

 負けたブルージェイズのゲレーロがベンチで涙を浮かべていた。相撲取りのような巨漢。だがあのごつい顔に涙は不自然ではなかった。
 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました