「妻を亡くしましてね」と、森繁久彌さんが語るシーンが寅さん映画にあったが、いいシーンのはずなのにあまり印象に残らないことについて、以前このブログに書いたことがある。
どんなシリーズだったのかと調べたら、「男はつらいよ」第6作の純情編、マドンナは若尾文子さんであった。
森繁さんは五島列島の福江島玉之浦で、釣宿を営む初老の宿主という役であった。山田洋次監督好みの美しい風景が映し出されていた。
森繁さんの演技をもってしても、「妻を亡くしましてね」というセリフに感銘がない。なぜなのかと考えると、森繁さんにとっては余りに手慣れたセリフということだろうか。
昨日、この8月に夫を亡くした人と近所のクリニックでばったり会った。
クリニックに出かけている間に、昨年1月に夫を亡くした人の訪問を受けていた。寺の関係で3回忌を12月に行うらしい。
近所に連れ合いを亡くした人が多くなっている。知っている限りでは夫が先に亡くなっている夫婦がほとんどである。
寂しい生活をしていると打ち明ける人もいる。クリニックで会った人は、離婚した50歳になる娘さんと二人暮らしだが、やはり夫婦とは違って話す内容もなかなか噛み合わないという。
10年程前に家内の友人の旦那さんがくも膜下出血で急死されたが、ほんの数十分前に先に帰ると買い物先で別れ、奥さんが帰ると玄関に倒れていたということである。
葬儀の時、奥さんは長襦袢を身に着けていなかったという。どれほどの悲しみであったのかと思う。
夫を亡くす、妻を亡くすということは人生最大の悲しみ。
私などは妻に先立たれるようなことがあれば発狂するのではないか。
あとなん年のことなのか、なによりお互い元気でいることが大切である。
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