がん告知・医療費・マイナンバー

つぶやき

 2人に1人ががんになるという時代である、という話はずいぶん前から聞いている。自分には関係ないと思っていたが、私もがんになってしまった。 女房が久しぶりに学校時代の友達と会って帰ってくれば、あのご主人ががんなんだって、という話になる。

 私の姉も、2人の義兄も、義姉もがんで亡くなった。近所の知り合いもほとんどの人ががんで亡くなっている。間違いなく2人に1人はがんである。

 昔はがんと言えば胃がんであった。医者は本人には告知せず、家族に伝えた。それだけ死亡率が高かったのであろう。今は直接本人に言うのが普通になっているようだ。私の担当医はまだ20代のような若い研修医であるが、明るく高いトーンで、「喉頭がんでーす」、と私に告げた。

 手術後10カ月が経ったが、毎月の定期検診で、「再発していません」、という研修医の明るい声には心休まるが、再発や転移した時もきっと明るい声で何事もなかったかのように、「再発してまーす」、と言うのだろう。
「再発していません」という声に安心感を持っていたが、それが今後もそうであることに何の根拠もないことに気がついた。

 きのう2週間ぶりにリハビリ病院に行った。お年寄りの患者の多いことにいつも驚くが、それよりも何とか療法士という病院スタッフの多いことに驚いた。受付の女性たちを含めれば何人の職員がいるのだろうか。
建物自体はそんなに大きな病院ではない。この人たちの月収がいくらとして、どのくらいの人件費がかかるのだろうかと考えてしまった。リハビリの設備なども考えれば莫大な金額になるはずである。

 バブル華やかなころ、人工透析を専門とする医師が高田馬場の土地を購入し病院を建てた。ほんの半年前くらいまで1坪あたり120万円くらいの土地が1坪1,000万円で取引された。
 医師は建物代も含め数十億円の借り入れをした。こんなに借り入れて病院経営は成り立つのだろうかと心配したが、何事もなく病院は運営され、今では前後左右の土地を買い拡げ、広大な病院になっている。
 人工透析の病院はこんなにも、言葉は悪いが、儲かるものなのであろうか。

 死期の迫った患者は延命措置を希望しないと入院できない、という話を聞いた。延命措置を希望しないと退院させられる、ということと同じ意味でもある。
 延命措置は医療行為になるが、それをすることなく入院されては病院にとってはタダ働きになるということなのだろう。
そのためか死期の迫った患者は、本人や家族の意志を確認することなく延命措置をする病院もあるという。

 こんなことを書いてきたのは健康保険料が高いからである。天井値が低いからちょっと収入が増えると保険料は最高額になる。
 自分は毎年払う保険料以上に医者にかかったことはない、と多くの人が思うはずだ。しかしそんな言い分を認めていたら保険料が集まらない。
 天井が低いという批判はあっても、収入の多寡に合わせた保険料という名目で、公平感を持たせたことになっているのが現在の保険料であろう。国は、国民が受ける利益は国民が負担すべきだ、という考えに基づいている。しかし節約という考えを全く持っていない。

 以前私の事務所に税務調査が入ったことがある。私の事務所は住まいを兼ねた一戸建てである。税務署の若い職員は、普通のサラリーマンだったらこんな家には住めない、と不機嫌そうに言う。東京の郊外のどこにでもある一戸建てである。努力して商売を始め、苦労して誰の助けも借りず築き上げた家である。そんなに贅沢な家とも思えない。

 今思うと税務署の職員は、一般的なサラリーマンよりいい生活をしている人間はすべて不当に儲けすぎている、という意識を持っているのではないかと思う。
 自分の才覚で収入を得ているということに対する理解ができないのではないかと思う。税務学校でこのような教育がされているのであろう。

 これからマイナンバーがどのような威力を発揮するのだろうか。預金高だけではなく、毎月の収入もチェックされることになるだろう。個人の収入は筒抜けになる。その結果何が起きるのか。税金の増額だと思う。

 仮に計算しやすいために1000万円の年収があったとして、国はこのうち200万か300万円くらいを年間の生活費として定めて、200万円くらいを住宅ローンの返済金として認め、残りは税金とするのではないか。

 生活費の決め方は平均的サラリーマンの生活費である。あの税務署職員がいう普通のサラリーマンの生活である。その生活費を超える生活費は贅沢として認めないのではないか。まさか、極端な考えではないか、と言うかもしれないが、方向は間違っていない気がする。

 昔の男がよく言ったというように、誰のお陰でめしを食っているんだ、という意識は国にもある。国にもあるというより、国は最初からそう考えている。国民の貯えなど「誰のお陰で貯まったと思っているんだ」

 個人の資産を国が把握することがマイナンバーの目的である。この目的がどんなことに利用されるのか、火を見るより明らかである。そんなに甘いはずはない。収入が分ってしまうのであるから、そんな金はない、と逃げることはできない。
 
 税務署の職員は、税金を納めることは国民の義務である、と徹底的に仕込まれている。そうしないと税徴収に迷いが生じるからだと思う。税金の無駄遣い、不公平などということに一切耳を貸さない。見事に税金の番犬になっている。

 先日マイナンバーカードを受け取る手続きをした。権力に従順な番犬がそこら中をかぎまわっている。国には何を言っても勝てっこない。(了)

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