近所のお節介焼きのおばあさんの姿がこの2、3ヵ月見えない。
おばあさんと書いたが年齢を知っているわけではなく、仮に今80として、20年程前にこの地に引っ越してきた時からおばあさんであった。ディズニーのアニメに出てくる魔法使いのおばあさんにそっくりである。
どうしようもないお節介ばあさんであった。例を挙げるのも不愉快だが、人の家に上がり込んで、カーテンを変えろ、テーブルを変えろ、台所を変えろ、と指図するようなお節介である。大げさな例えではなくこの通りである。もちろん近所の鼻つまみ者であるのは言うまでもない。
何ヶ月か前、救急車で搬送されたが受け入れ先がなく、終末医療の施設に引き取られたという話を聞いた。
ご主人と揃って国家公務員であったという話を本人から聞いたことがあるがそうかもしれない。もちろん上級公務員ではなく初級公務員ということである。
スーパーマーケットの喫煙所でタバコを吸う姿をなんども見たが素人の吸い方ではない。どういう公務員だったのかと、考えこんでしまったことがあった。
近所の嫌われ者であることも知らないようで、話し相手が欲しかったのかある時期、庭に出る家内を待っていたかのように訪ねてきて、自分の昔話をしていたようだ。
「生まれ変わったらあなたのように絵を描きたい」、と言っていたこともあったらしい。
常識外れと異常さを持っていた人であったが、可哀そうな人でもあった、と言ってあげたいところだが、救いがたいほどのタチの悪さであった。こういう人間が今の時代でもすぐそばに住んでいた。
このおばあさんの話はこのくらいにして別の女性のことに移る。私も家内もこの女性も30代の、みんな若かった頃の話である。
家内が近所の同年代の奥さんたち何人かと話をしている時その女性が現れて、「あなたのところはお金持ちそうに見えないのになんであなたは働かないの」と家内に言ったという。
家内が留守であっても相談事があると言って訪ねてくる。変な噂が立つことを意識しているかのようである。
近所の家内の知り合いはしきりに、「注意した方がいい」と家内に言っていたらしい。
この女性夫婦は一時この地のマンションから離れたが、数年してまた戻ってきた。
戻ってきてから出歩いている姿を見ることがなくなった。ほとんど家から出ないようである。いろんなところで人の気持ちをかき回してきた人である。どうしたのだろうか。
この奥さんは天真爛漫ということではない。どこかを病んでいる人である。転居していた先で、そこに住めないような何かがあったのではないだろうか。
同じ町に50年近くも住んでいるとみんな人生ドラマとなる、
近所の奥さんで「飾り窓の女」と呼ばれた女性がいる。亭主が包丁か何かを持って、その奥さんと男を追っかけて行った姿を見たという人がいた。、
人生いろいろである。この小さな町にも人生の破綻がある。
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