ある日のショッピングモールで

　ショッピングモールというのか、スーパーマーケットでいいのか、隣の市に大きな商業施設があるのでたまに出かけることがある。

　市内のデパートが閉店となったので、店をのぞくという楽しみが無くなってしまった。廉価品ばかりの店内を歩いても、「これいいな」ということがない。

　家内は店内を歩き回り、私はフードコートでアイスクリームかコーヒーでスマホのニュースを見る。

　先日、私の隣の席に座った夫婦が少し気になっている。二人とも高齢者だが、奥さんの方が上のように見える。

　紙袋と飲み物をテーブルに置き、ご主人が椅子を引いたが、奥さんのためかと思ったら自分が座り、奥さんには手で「あっちに座れ」と対面の席を示していた。

　紙袋からドーナッツが２つ出てきて、それを一つずつ食べていた。昼食なのかもしれない。

　奥さんは高齢になって痩せたのか、少し弱々しそうに見える、顔も体も小さな人であったが、若い頃は知性派と思わせるような人だった。

　奥さんはニコニコご主人を見つめながらドーナッツをちぎっていたが、ご主人は終始不機嫌そうで奥さんに冷たそうであった。

　いくつくらいなのであろうか。私たちより上に見えるが、ご主人は８２,３というところだろうか。８２,３は、まだ若そうに見える限度のように思うからである。

　なにか気持ちに残るご夫婦であった。