あの歌手が亡くなったのは去年

つぶやき

 「お酒はぬるめの燗がいい 肴はあぶったイカでいい」
 先日、「駅」という映画を観たせいか、この歌詞が口をつく。

 八代亜紀さんが今年死んでしまったなと思っていたが、正確には去年の12月であった。そんなことがあるはずはない、という人気歌手の死であった。

 秋だから亡くなった人を想うということではない。私は1年中亡くなった人のことを想っている。仕事もなく病気を経験すれば、考えることはそんなに多くはない。

 中村勘三郎さんと坂東三津五郎さんの死をよく思う。歌舞伎のファンでもないし観たこともないが、若くして亡くなったということからか、惜しい人を亡くしたといつも思う。

 中村勘三郎さんは2012年12月に57才で、坂東三津五郎さんは2015年2月に59才で亡くなられている。
 歌舞伎界の屋台骨ともいう人が相次いで亡くなってしまった。

 お二人の死が、いつまでも気持ちにあるのは病状である。
 勘三郎さんは食道がんということであったが、それも余命宣告を受けるほどの状態ではなく、手術は成功し回復に向かっているという報道があったのに、それから間もなく亡くなってしまった。死因は肺疾患とされている。

 三津五郎さんはすい臓の病気ということであったが、すい臓がんであったのかどうかははっきりとしないまま、何年か後にすい臓がんで亡くなったということになっている。
 三津五郎さんも快方に向かっているという中での訃報であった。

 「しみじみ飲めばしみじみと 想い出だけが行き過ぎる」
 そういう人生ってあるのだろうなと思う。そういう思い出を肴に酒を飲むのが大人の酒かと思う。
 しかし、でもあまりつらい思い出がない方がいい人生のような気がする。

 今年の秋は、秋になっているところとなっていないところが併存している。
 秋の夜に、思い出に邪魔されない酒を楽しみたいが、闇バイト強盗の狂暴を知るとそうもしていられない。

 今年の秋は怖い秋である。

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