あおりと言えば悪質ドライバーによるあおり運転ということになるが、今の世の中、あおるのは車だけではない。
テレビショッピングは以前「お電話をお待ちしております」と丁寧であったが、現在は「今すぐお電話ください」と丁寧を装いながらキツイ口調である。
訳の分からない年寄りなどは「ハイ判りました」とすぐ電話をしてしまうのではないだろうか。
過払い金のコマーシャルでは、「判らなくても、ハッキリしていなくても、何が何だか判らなくても、とにかくなんでもいいからお電話ください。ジュー、ジュー、ジュー」、ということになっている。ひどいあおりである。
素人っぽい人が「何万円か借り入れを繰り返しただけなんだけどねー」と言っているが本当だろうか。見る人が不審に思うコマーシャルである。
ネットの記事はあおりそのものと言っていいのではないだろうか。低俗週刊誌よりひどい。南海トラフ地震や首都直下地震に関する記事はひどいものだったが、結局それは本を売るための広告であった。
週刊誌は買わなければ済むことだが、ネットはボタンを押せば目に飛び込んでくる。
考えてみればネットは記事そのものも、広告媒体としても、テレビや雑誌以上の力を持っていることになる。
低迷する社会であるからあおり社会になるということであろうか。
「今すぐお電話ください」は広告関係の誰かが決断した言葉であろう。普通ならそんなことはテレビには流せない。「お電話をお待ちしております」では商品が売れなかったから過激な言葉に替えたということであろう。
「放送終了後30分までのお値段です」。同じ品物にそんなに値段の違いをつけていいものなのだろうか。公正取引委員会とかJAROとかで問題にしないのだろうか。あおりもここに極まるという感じである。
きのう、銀行の相続遺言無料相談会なるものに妻が行ってきた。人様に相談するほどの財産があるわけではないが、私が死んだ後の手続きなどの知識を得たいらしい。
銀行の無料相談会というのは、相続でも税金や投資のことなどにおいてもよく見かけることであるが、何でもかんでも手数料を取るようになった銀行において相談は無料とは信じがたいことである。
説明会ではなく相談会ということで、銀行の対応はマンツーマンであった。
我々夫婦の家の所在や大きさから、私の職業まですでに調査済であったことを帰宅した妻から聞いた。
マンツーマンならなぜ自宅に来ないのだろうかと疑問に思ったが、自宅に来たらセールスになるということなのだろうか。あくまで相談に乗ってあげる、というスタンスらしい。
いろいろ親身に説明をしてくれたらしいが、結局銀行が勧めるのは相続手続きの代行と生命保険の勧誘であった。
相続手続きの代行は戸籍の取り寄せとか相続登記、封鎖預金の解除手続きなど、費用は150万円という。
世の中、難しいことが多くなってきた。特に最近は死んだ後の手続きが面倒で難しいということになっている。これからの時代、葬儀屋と死後手続き業者が忙しくなる。
火葬場が混んでいて、亡くなった人の遺体を私設の保管所に1週間近く預けなければならないことが常態化している。しかしこれは嘘であるという記事が先日の新聞に掲載されていた。
葬儀場の死体安置所は空いているというのである。どういうことなのか。
死体安置所の稼働状況を遺族が確認するということはない。葬儀屋の言葉を鵜呑みにして金をとられるだけである。これも関係者のあおりと言ってもいいようなことである。
相続手続きの代行になぜ150万円かかるのだろうか。司法書士が相続登記をするのにどうして何十万もの報酬がいるのか。今の時代登記はオンラインで書類も作らない。誰にでもできる簡単な作業になっている。
戸籍だ、分割協議書だと法律問題のようなことを言うが、報酬を高くするための口実である。分割協議書などは文房具屋に行けば売っているではないか。難しい手続きだ、とあおっているのである。
死後の手続きというものが商売になる時代になってきた、というより商売にしようとする時代になってきた。
銀行は人が亡くなるとその口座を封鎖するが、そんな権限はどこにあるというのだろうか。
確かに不正引き出しを防ぐために、やむをえない処置と言えるかもしれないが、やりすぎの感もある。150万円支払えば封鎖されることもないという。これは脅しではないか。
義兄が、亡くなった妻の預金口座を調べてもらったとき100万円かかった。取引銀行の口座を調べるのになぜ100万円もふんだくるのか。預金額がもっと多ければもっと高かったらしい。
今の社会、思った以上にあおり社会であることに気づく。あおりは人の弱いところを突いてくるから防ぐのは難しい。
人が死んだ後の手続きが難しいものであるということがそもそもおかしい。
意外と、遺言にしても相続登記にしても葬儀場にしても、直接その役所に行って相談すると簡単なことであることが多い。
遺言書の確認など裁判所の確認は簡単である。
登記所などで相続登記を相談すると「あとはこちらでやるからいいです」とこれもまた実に簡単である。
中には「司法書士に頼むとぼられるよ」、と忠告してくれる登記所の職員もいる。難しくしているのはそれを商売にしている人たちで役所ではない。
面倒で難しいことが金で済むならそうしよう、というのが人情である。
銀行の150万は結構依頼があるようだ。(了)
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