「見苦しい」という言葉がある。見苦しいことがたくさんある昨今であるが、最近ではあまり聞くことがない。見苦しいとは注意言葉であるが、注意する人がいなくなってしまったということかもしれない。
「見苦しい真似はおやめなされ」と北大路欣也さんが時代劇で口にすると、それでその場がピタッときまる。時代劇に似合う言葉である。
北大路さんは私と同じ歳かと思っていたら4つ上であった。市川歌右衛門の息子として松方弘樹などと一緒にデビューした。
若い頃は松方の方が目立ったような気がする。育ちの良さを感じる伸びやかな青年であったが、特別ハンサムという印象はなかった。どういう役者になるのか分かりにくい役者さんであった。
歳と共に役に恵まれたということだろうか。大河ドラマ「竜馬が行く」に抜擢されて以来「子連れ狼」「事件シリーズ」「銭形平次」「大岡越前」など名作の主役を務めてきた。最近では「三屋清左衛門残日録」で年相応の役を演じている。人は誠実であるべきことを演じてきた人である。役者冥利につきる運のいい人である。
時代劇は「見苦しい真似はおやめなされ」で終わるが、現実はそんなに簡単にやめるわけにはいかないようだ。言うまでもないことだが永田町はいつも見苦しい。キックバックだけではない、不倫まで出てきた。
自民党の広瀬めぐみという参議院議員の不倫報道がされている。あまりいい顔写真が載っていない。こういう顔をしている人だから、こういうことをするのだ、という写真ばかりである。
マークされていたのであろう。誰の目にも男性関係の派手な女性議員と見られていたということである。
歳は50代半ば過ぎ、相手は外国人、自分が運転する赤いベンツ、歌舞伎町のラブホテル、国会議員。不倫ではないだろう。この人には最初から倫は無さそうである。淫という字が似合う。国会議員たる者が、と批判されるが、国会議員だからそうしたかった、ということではないだろうか。
夫と子供は許してくれたという。一生をかけて夫と家族に償っていきたい、と述べている。どうかな。なにを許したというのだろうか。
この人の男性関係は日常的なことではないだろうか。女性としては手際が良すぎる。
恥をかいたのは夫と子供である。そのことにこの議員さんは気づいているのだろうか。これから先いろいろ問題を起こしそうな人である。
タレントの杉村太蔵氏がこの件についてコメントしていた。「参議院に240人もの議員は必要ない。6年の間選挙もなく、毎年数千万円の報酬が約束されていることが問題だ」と言う。
彼は小泉チルドレンとして衆議院議員に当選したとき、「早く料亭に行ってみたい」、「真っ先に調べたのは国会議員の給料。2500万円ですよ」、「念願のBMWが買える」等の発言をした人である。
興味がどこにあるのかの違いで、人間の品性において広瀬議員と大した違いはない。こういう人達が議員であり議員であった。日本がよくなるわけがない。
二階元自民党幹事長は自身の資金管理団体「新政策研究会」の収支報告書を提出し、総計で3500万円分の書籍を買っていたことを公表した。そんな勉強家であるはずはない。
不思議なこともあるものだと思ったが、不思議でもなんでもないことであった。御用作家に自分の礼賛本を書かせ、それを全部引き取るということである。まあそういうことだろう。安倍さんもこの手をずいぶん使ったらしい。
本を買ってどこが悪いというのが二階氏の言い分であろう。しかし悪いことなのである。自分たちで勝手に悪いことにしないだけのことである。自民党政治というものは、悪いことを悪くないことにするためにあった。二階さんという人は存在でそれを体現した人である。
私は時の政府に批判的と言われる新聞を取っているので、自民党政治なり、自民党の議員を礼賛するような記事は読んだことがない。情報が偏っているということになるかもしれない。権力に迎合する記事や本があってもいいのであろうが、しかしジャーナリズムは権力を批判するものを言う。権力に迎合する記事は太鼓持ちという。それもよしとするならそれでよし。
時代劇でなくても「見苦しい真似はおやめなされ」の一言で事は正されるのが良識ある社会というものである。いつまで見苦しい真似を続けるのだろうか。(了)
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