「歴代のワイドショーで朝の顔と言えば、キャスターの小倉智昭さんを思い浮かべる人も多いだろう」とのリード文を付した小倉智昭さんの、がんに関する記事が先日の夕刊にあった。
小倉さんは私と同じ1947年の生まれであるが、5月生まれというから現在76歳ということになる。
69歳の2016年に膀胱がんを公表した。医師から全摘手術を勧められたが温存を望み、かなりの金を投じて民間療法を試したそうだが症状は悪化し、大量出血したことから18年11月に膀胱を全摘した。
その2年後、肺への転移が判明し、昨年の末には左の腎臓を摘出したということである。腎臓は2つあるが、2つ目も取るようなことになれば人工透析になる
小倉さんはテレビのワイドショーの司会などをしていたようだが、私はほとんど見たことがない。膀胱がん発症以後、「病への警鐘が僕の務め」と、自らの体験をすべて公表しているらしい。
国立がん研究センターは、喫煙による膀胱がんリスク上昇の科学的根拠は確実であると公表している。
小倉さんは禁煙する56歳の頃まで、1日3箱くらいを吸うヘビースモーカーであったという。私は70歳まで喫煙していた。がんになるのは当然ということになる。
喫煙は喉頭がんや食道がんだけでなく、大腸や膀胱まであらゆるがんの原因になっている。
それを数年前まで国は専売として売っていたのであるから、いくらがんとの因果関係が解明されていない時代であったとはいえ、宣伝までして売ることはなかったのではないかと思う。
酒もタバコもやらない人でもがんになることが多いことから、がんになるかならないかは酒やタバコやのせいではなく、運命だという考えがある。そうかもしれない。
がんという病はなってみないと実感しないものであるが、なってみると命に関わる重大な病であることを突き付けられる。
その差に人は愕然とするが、しかしなってみるまでは愕然としないから、タバコをやめないというのが人の常である。人生には愕然が必要である。
がんは運命でもタバコでもなるものであるが、避けることのできるのはタバコをやらないことだけである。これを使わない手はない。
小倉さんは、がんが肺に転移した後、生死の境目をさまようほどの重体に陥ったことがあるという。三途の川をハッキリ見たというのだ。
とっくに亡くなった父親が川のほとりでたたずんでいて、お前もこちらに行くのかと語りかけたという。本当の話だと思う。
「身に沁みる。老後は思い通りにならない」という言葉がこの記事のエンディングである。しかし小倉さんは「がんは終活の準備ができる」と前向きにとらえている。
今までぽっくり逝った方がいいと思っていたが、がんならば自分の寿命をある程度予測できる。やり残したことを片付けられるから案外いいかも、と思うようになったと言う。
キャスターという仕事柄が言わせているのかもしれない。これだけの病状を「終活の準備」と言える人はあまりいないのではないか。
現役の頃の小倉さんは何か生意気そうであまりいい印象はなかった。
明るい顔で病気を語る写真が掲載されていた。この人は世の人のために終活をされているのではないか。なかなかの人なのだな、と思う。(了)
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