君たちはどれほどものを知らないか

つぶやき

 また立花さんの続きとなる。

 立花さんは東大での最後の講義において、「君たち若い人には無限の可能性がある」という卒業式の来賓が口にする無責任な決まり文句を言わなかった。

 この言葉は「巨人軍は永久に不滅です」という長嶋さんと同じで、カッコいいことを言いたかっただけのことでなんの意味もない。若者に無限の可能性がないことは大人が知っていることである。。

 「今からはっきり予言できることは、君たちの相当部分が、これから数年以内に、人生最大の失敗をいくつかするだろうということです」と言っている。

 「なぜこんな話をするかといえば、君たちがどれほどものを知らないかを教えるためです。大学生は、この社会ではまだヒヨコのごとき存在です。二本足でやっと歩けるようになったので、本人はもう一丁前になったつもりでいるかもしれませんが、実はまだ世間様のことなどほとんど何も知らない存在なのだということです」

 立花さんは、70歳を過ぎた自分は若い人を前にして、最後に何を語るべきかということを考えたのだろう。
 考えなかったとしてもなにより、「無限の可能性がある」などということではなく、若いが故の失敗ということを若者たちに伝えたかったのであろう。

 立花さんの言うとおりである、と言っては不遜になる。20代において人生最大の失敗をする、ということにもっと強い意識を持つべきであった。立花さんの指摘にあらためて感銘する。

 20代は人との交わりにおいても、仕事においても、自動車の運転においても、経験の浅いことから失敗をする。しかもその失敗は、その後の人生に少なからぬ影響を及ぼす。
 
 失敗は成功のもとと言われるが、失敗の内容による。技術的なことならそう言えるが、人間関係においては成功のもとではなく、後悔のもととなる。場合によってはその後の人生を決めてしまう。この失敗は回復や修正することができないものなのである。

 「20代という年齢の持つ危うさ」を先輩社会人は若者に教える必要がある。20代をどう過ごしていくかということは、人生において非常に大切なことなのである。

 70代になって人生を振り返ることは、懐古趣味ということではない。70代になったからこそ振り返ることができる。歩いてきた道を高台から俯瞰できるのが70代である。

 ベートーベンのミサ・ソレムニス終曲「我らに平安を与えたまえ」が聴こえる。人生を闘ってきたベートーベンが人生を振り返るメロデイである。

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