テレビなどくだらないものだと言いながら、つい見てしまうことがある。
久しぶりに川越のデパートに向かう。特に用があるわけではないが、このところ立川の商業施設で時間をつぶすことがあったので、今日はなんとなく川越ということになった。
行ったところで特に買うものはない。熊谷守一の版画展や日本の職人展なるものを見て、焼き鳥を買って帰っただけのことである。焼き鳥の値上げがひどいと家内が言う。
帰りの途中、農協の特売所においしそうな「ほうとう」があったので、それを買い、今日の酒の仕上げはこれで決まりということになった。
3時頃から飲み始め、テレビをつけると、1個800円、2000円、10円というチョコレートの食べ比べをする番組が放送されていた。
食通と言われるフランス人とイタリア人数人に、3種類のチョコレートを試食させ、一番高級なものを当てさせるという企画である。
10円のチョコレートは日本製の、言ってみれば駄菓子である。ヤラセがあったのかどうかは分からないが、試食者の大半の人が10円のチョコレートのおいしさを語る。何人かの人は10円のチョコレートを正解としていた。
チョコレート好きとしてはなかなか面白い番組であった。テレビ嫌いでも乗せられてしまうことがある。
この番組の途中なのか、終わってからなのか覚えていないが、不動産仲介会社のコマーシャルがあった。
営業マン役の出演者が、顧客役の夫婦連れに対して深々とお辞儀をしている。
不動産仲介会社のコマーシャルにはこのパターンが多い。
今まで特に関心を持ったことはなかったが、お辞儀が丁寧すぎることに気がついた。実際の不動産屋の店頭では見たことがない。
酔っぱらった頭はときどきまともなことを思いつく。
何故不動産屋の営業マンが深々とお辞儀するシーンが、不動産屋のコマーシャルのメインになるのか。
不動産仲介業というものは物を作って売る商売ではない。右から左に人様の財産を移すだけのことである。昔は周旋屋と言って口八丁手八丁。世間では軽蔑された職業であった。
そういう商売であるから不動産仲介会社のコマーシャルには、視聴者にアッピールする製品そのものがない。「自信をもってお勧めする商品」というものがないのである。
客から売却を依頼された住宅をテレビで紹介するわけにもいかない。他の業者に知られてしまうし、買いたいという人が直接売主と交渉してしまうかもしれないからである。不動産仲介というものはオープンのようで、陰の部分が多い。
テレビコマーシャルで、「自信をもってお勧めする商品」が無いならば何を宣伝するのか。真面目に、誠実に、一生懸命お客さんのために努力します、ということしかない。
企業としてそんなことはあたり前のことだが、世間は不動産屋に対して「騙されるのではないか」という不信感を持っている。そのため、なにより営業マンの誠実さを装ったお辞儀しかない、ということになる。営業マンがみな誠実でハンサムとは限らない。しかしコマーシャルを見た人は信用してしまうかもしれない。
事務機器を販売する会社のコマーシャルもひどい。聞くに堪えないダジャレである。
「バインダーがない。たのめばいいんだー」
この会社も物を作っている会社ではない。ブローカーである。会社の体質が見て取れるコマーシャルである。
テレビで宣伝しては採算が合わないほうとうがおいしい。このところ群馬のうどんが気に入ってほうとうを忘れていた。
川越で買ったが、生産地は山梨であった。本場ものである。
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