むかし母と一緒に暮らしていたころ、外出先から帰ってきた母が、「継続は力なりだって」、と嬉しそうに言う。えらく感心したような口ぶりである。
母は創価学会の信者であり、毎月か毎週か、座談会と呼ぶ会合が開かれ、そこで聴いてきたことらしい。
信仰(創価学会は信心と言うようだが)を長く続けていくことが大事だということなのであろうが、母は何かこの短い言葉に納得したようで、その後この言葉を母の口から何度も聞いた。
言葉によって人生が変わる、ということはあると思う。病気が治るということもあるらしい。
頚椎症の手術で入院していたとき、看護学校の若い女子生徒が実習生として私の担当になった。
毎朝の検診の際、「痛みはありますか」と聞くので、その都度、「お産の痛みに比べれば痛くもなんともない」、と答えていた。
そんな冗談のやり取りをしているうち「私は10代で子供を産みました」と言う。
えッと私は驚く。そういえば男女の関係にしか興味のない高校生であったような面影がある。
子どもは今3歳だが、同い年の亭主がパチンコばかりしていて、家にも帰らず金も入れず、将来の生活のために看護師を目指している、離婚するか迷っている、と言う。
私はその女性に、そんな男と一緒になったあなたにも問題はあるが、子供まで作って働きもしないというのでは、その男はたんなる遊び人で、どうしようもない男だから別れた方がいいと、無責任な男の悪さというものについてこんこんと教えた。
実習が終わる日、私の部屋に挨拶に来て、「本当に良く分かりました」と言って帰っていった。
思い当たることばかりであったのか、少し心配になった。だが人の悪口を言って感謝されたのは初めてであった。
言葉の重みということに気がつかない人生を送ってしまった。口から出た言葉はなかったことにはできない。言葉を選ばなければいけない。「大丈夫と笑った顔で泣いている心もある」誰の言葉であったか。(了)
コメント
こんにちは。
偶然あなた様のブログを見つけ面白いので大部分読ませていただきました。
日々平凡な生活をしている65歳の主婦です。
何人かお気に入りのブログがあります、あなた様のブログも入れることにしました。
利兵衛さんのブログは本音で書いている事が伝わります。
よろしくお願いします。
マルコ様 コメントありがとうございます。マルコさんというと「母をたずねて3千里」を思い出しました。
文章が下手ですが、思うことを一生懸命書いております。
送信しましたメールアドレスはriemonになっております。利右衛門と書きます。実はこれが私は好きなのですが、
ブログ登録の時、まあ長くは続かないからこれでもいいか、と利兵衛にしてしまいました。この名も好きになってしまったのです。今後も利兵衛にします。よろしくお願いします。