通っている歯科医院は若い歯科医を何人か採用し、歯科医一人しかいない医院に比べれば大きい歯科医院ということになるが、若い医師たちは1週間に2日しか来ないので、次回の予約をとっても早くて1週間後、ひどいときは4週間後などということもある。
これでは治療にならないではないか、患者をとりすぎているのではないか、と受付嬢に文句を言っているのだが一向に改善されない。歯医者を変えればいいのだが、それも面倒でそのままにしている。
歯科医を医者とは言わないらしい。医者と言うのは人間の体全体を診ることで、歯のような体の一部しか診ない医師を医者とは言わないのだそうだ。
歯科医師はセメントだ、ドリルだということだから、何かのリフォーム工事の職人のようなのかもしれない。
医師と医者とはどう違うのだろうか、と少し気になったが、多分医師は資格から見た呼称で医者は俗的な呼び名であろう。
歯科医も歯科医師と言うのであるから医師であることには変わりはないことになる。
歯科医を医者と呼ばないのはどうも医者と呼ばれる人たち、あるいは医者養成機関が作り上げた一種の差別かもしれない。
難しい試験に受かった人は偉いが、やさしい試験に受かった人は偉くない。そういうことらしい。歯科大学と医科大学では入学試験の難しさが全く違うそうだ。
私が通っている歯科医院の院長さんが最近本を出版した。
その副題に「歯科医は医者にコンプレックスを持つことはない。君も歯科医になって地域の人々の健康を守るため活躍しよう」というようなことが書いてある。
やはり歯科医は医者に対してコンプレックスを持っているようだ。
なんでもそうである。税理士より公認会計士の方が偉い。弁護士と司法書士では比べ物にならないほど弁護士の方が偉い。初級公務員より上級公務員の方が偉い。
歯医者は普通の医者より人生においてお世話になる回数は多い。歯医者さんはコンビニの数より多いというが、いい歯医者を見つけるのはなかなか難しいものである。
何がいい歯医者なのかも良く分からないが、とにかく知らない歯医者に初めて行くときはなんとなく不安が先行する。
だいぶ前であるが、あそこの歯医者さんなかなかいいですよ、という知人の言葉である歯科医院に行ったことがある。
偏差値はかなり低い歯科大出身なのに、東京歯科大学の修了書なるものが壁に飾ってある。なにを終了したのかがはっきりとは分からない。
洋服屋のショーウインドーに賞状が飾ってある。それをみた波平さんは洋服の仕立てを依頼する。
その賞状は仕立て屋さんが釣り大会で入賞した時のものである。
「ああいう客がいるから助かる」とその仕立て屋さんは、店の若い者を相手に苦笑する。もちろんサザエさんの一話である。
東京の郊外といっても私の住むこの町は医療の世界からすれば地方なのかもしれない。
医者の学歴にこだわることになるが、近辺の医療機関の医師の出身大学を見てみるとほとんどが私立大学である。それもあまり有名ではない大学ばかりである。
だから医者として良くない、というつもりはない。
ただやはりどんな世界でも優秀な人は一握りであり、そういう人は地方には来ないということである。
地方の医療はあまり偏差値の高くない大学出身者によって行われている。それが問題であると言っているわけではない。(了)
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