アメリカにゴールデン・グローブ賞という映画賞があるらしい。そのアニメ映画賞に、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が選ばれたというニュースがあった。
受賞を受けてスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「……日本では年初以来、地震や事故などの痛ましいニュースが相次ぎました。やり切れない思いで一杯になります。そんな中で受賞という明るいニュースは、少しでも皆さんに笑顔を届けることができるでしょうか」というコメントを出したという。
受賞は被災地の皆さんに「明るいニュース」になるのだろうか。
「暗い話はやめて明るい話にしましょう」と人はよく言うが、暗い話にいる人たちはどうしたらいいのだろう。
小林旭さんが「令和の芸能界を語る」として、
「本来なら通行人や脇役程度の連中が主役を張っている。俺はもう、そんなテレビに出ることは御免被りたいよ」と、お笑い番組や大河ドラマ、アイドル歌手グループなどテレビ界を批判している。
「徹子の部屋」の出演も、〝中身のないお喋りに過ぎない〟として断っているそうである。
ご本人が言うように、「昭和の芸能界を肌で知り、今日まで生きてきた人間は俺だけになってしまった」
寂しさを感じるのだろう。85歳だそうである。
しかし小林旭さんが、「なんとか渡り鳥」とか「なんとか旋風児」だとかいう、私に言わせれば訳の分からない映画に出演していた時は、年寄りのひんしゅくをかったものである。時代とはいつもそういうものであった。
人生には、どう生きるべきかと考える時と、つまらない人生を送ってしまったと愚痴を言う時がある。
宮崎駿さんは高齢になられてもまだ「どう生きるか」ということを考えているのだろうか。映画を観ていないから何とも言えないが、こういう題名をつけるのだから、「どう生きるか」は宮崎さんのライフワークなのかもしれない
小林旭さんは、あのように今の芸能界を批判することの似合う人である。言っていることは間違っていないし、暴言でもない。長く芸能界にいる小林旭さんだから言えるのかもしれない。
しかし目を見張るような素晴らしいことを言っているわけではない。大半の年寄りが思っている愚痴を口にしただけのことである。いい意味で言って普通の年寄りになったというだけのことである。
宮崎駿さんは82歳。小林旭さんとほぼ同世代である。
人は生きてきたとおりに歳をとる。小林旭さんは出演した映画によって人生を生きてきた。
小林さんが歌った歌に1曲だけいい歌がある。いい映画に出演して、もっと早くいい歌にめぐり会っていたならば小林さんの人生は変わったはずである。
宮崎さんは多分愚痴を言わない人であろう。愚痴を言う前にやることがたくさんある、という感じである。
愚痴を言わない人生を送りたいと思うが、それには卓越した人生観が必要である。宮崎駿さんの生き方は立派と思うが、誰にもできることではない。
小林旭さんは銀幕の大スターとして誰にもできないことをやってきたが、今では誰でもできることをやり、誰でも言えることを言っている。
人生如何に生きるか。大事なことである。(了)
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