昨日は昭和の日だそうである。全く知らなかった。10数年前から変わっていたらしい。
以前は天皇誕生日だった。それがみどりの日に変わったことは知っていたが、昭和の日になっていたとは知らなかった。
昭和の日ということであるから、あの昭和を思い起こし、懐かしむ日ということになる。昭和は64年続いた。
昭和を思い起こすと言っても世代によって昭和の風景は異なるはずである。
ある新聞では昭和を3つに分けていた。「初めの20年は戦争と原爆。次の20年は復興と成長。残りの20年は欲望と狂乱」
そして「騒々しかった冒険劇の幕が下りると同時にすべては崩壊した。
昭和は長すぎた」と論じていた。
しかし約60年の間に、日本人が何百万人も戦争で死に、そして焼け跡から復興して豊かになって世界第2位の経済大国にまでなり、そしてバブル崩壊によって社会が停滞したことが昭和であることは事実である。まさに小説のような世界である。
歳をとってみて、20年という歳月は早いものであることを知った。
私が20歳くらいの頃、そのわずか20年くらい前まで戦争があり、多くの若者が死んだ時代があったのである。
戦争を忘れてはならないというが忘れてしまうものである。
私は団塊の世代であるから戦争のことは全く知らない。
社会に出たときは高度成長の真っただ中ということになる。
バブル時代を経験し、その崩壊も見届けた世代である。
昭和の記憶は、子供の頃見た戦災で焼け残った工場の赤さびたトタン屋根と、社会人になってみた東京のネオンの華やかさである。
美空ひばりさんは平成元年に亡くなられている。昭和の終焉とともに世を去ったことになる。まさに昭和の歌姫であった。
昭和世代は「いい気なもんだ」と若い世代から非難されている。
高度経済成長期で頑張ったというが、それは外国の戦争や貧困のお陰ではないか。
結局は飲めや歌えのバブルで日本をダメにした人たち。幸運に恵まれただけだという自覚がない。それなのに何かにつけ偉そうなことを口にする。
まさにその通りだと思う。
日本は、ちょっと頭のいい生徒が、あまり勉強が好きではない生徒ばかりのクラスでトップになったということである。
平成以後、日本に低迷が続いていると言われる。しかし世界第3位の経済大国である。世界のトップスリーということであればすごいことではないかと思うが、そうでもないようである。
世界のトップ企業50の中に以前は36社も入っていたが、今はトヨタが35位にいるだけだという。
年収の平均額は韓国に抜かれて、世界第3位の経済大国はもうじきドイツに変わるという。
昔秋葉原で部品を買っていたような台湾の会社に日本の電機メーカーが買収されている。
戦後トランジスタラジオなどで世界的メーカーとなった会社の直近決算は最高だったというが、音楽事業とかゲーム機などの販売によるらしい。
物を作るのは後進国で、先進国はいわば利ザヤで儲ける、というのならそれでいいが、そんなうまい話がいつまで続くのか。
昭和は戦争、復興、バブルということになる。
バブルを体験した世代はもう社会の第一線を退いている。
バブルの絶頂期を、株価が4万円にもなろうという昭和64年(平成元年)とすれば、その時30歳であった人は今65歳、40歳であった人は75歳である。昭和もバブルも遠い話になってしまった。
しかし昭和は江戸時代の末期から明治、大正を通じて捉えるものではないかと思う。
昭和には確かに壊滅的な戦争があったが、それは明治以降続く、日本の在り方、というものがもたらしたものではないかと思うのである。
日本は民主主義を獲得した国ではない、民主主義を教わった国である。この違いは社会のあらゆる面で大きく影響している。
マッカーサーは日本人の精神年齢をを12歳と見たが、間違った指摘ではない。
問題なのはその指摘後である。昭和の時代、分別ある壮年の社会に日本がなったとは思えない。せっかく作り上げてきた社会をバブルに踊ってダメにしてしまった。
社会を維持していくということは、復興を目指すことより難しいことである。(了)
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