昼過ぎ、テレビをつけると、「行かないで、私寂しい」という倍賞千恵子さんのセリフが耳に入った。
映画「遥かなる山の呼び声」の終わり近くのシーンである。
この映画には泣かされた。高倉健さんも列車の窓から遠くを見ながら泣いていた。
「あんた牛飼いやめて中標津で働いているんだってね」
「はい」
「ちょっと聞いたんだけど、息子と二人で何年も先に帰ってくる旦那を待っているって話、ありゃ本当かね?」
「はい」
「そうか、それはよかった よかった」
観客を泣かす演技をしたのはコメディアンのハナ肇さんである。
監督は言うまでもなく山田洋二さん。
コメディアンのセリフで観客が泣かされる。山田監督の意図するところである。
新聞に紅白歌合戦の出場者と曲目が掲載されていた。ほとんど知らない人たちばかり。
イルカさんが「なごり雪」。南こうせつさんが「神田川」。どういうことなのだろうか。紅白は懐メロになったのか。
夕方、酔った勢いで「年忘れ にっぽんの歌」を見る。老人ホームの学芸会であった。1時間ほど見て書斎にこもる。
懐メロももう終わってしまったようである。懐メロだからみんな若くないが、「歳をとったな」から「歳をとりすぎたな」になっている。老醜という言葉さえ思い浮かぶ。
知らないうちに、とんでもないおおみそかになっていた。これで紅白でも見たら、気持ちの収拾がつかないまま新年を迎えることになる。
高齢者はなにより危うきに近寄らないことが肝心である。
よいお年を。
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