慶応高校が優勝した。慶応には幼稚園から大学まで何の関りもないが、なぜか応援する気になる。頭のいい学校がスポーツの世界で活躍する、というのが珍しいからである。
高校野球は頭を坊主にして、考えるな、体で覚えろと、体中泥だらけにしてひたすら白球を追うものである。頭のいい高校が優勝するはずはない。そういうことになっていた。
慶応は強かった。頭のいい高校がどうして強かったのか。
ヘアースタイルのせいだという説もあるが、100年以上もかかった優勝である。ヘアースタイルのせいだけとも思えない。何があったのだろうか。
大学には付属高校とか系属高校というものがあるが、慶応高校は早稲田で言えば高等学院ということになるのであろうか。そうであればやはりすごいことである。
因みに早稲田高等学院は甲子園に出場したことがあるのだろうかとネットを見たら、
『東京有数の超難関校は高校野球とどう向き合っているのか?早稲田大学高等学院の場合』という記事があった。
同じようなことを考えている人がいるものである。
慶応のことはほとんど知らないが、早稲田のことなら少しは分かる。この記事をきっかけにして頭のいい慶応の優勝について考えてみた、
早稲田高等学院(以下略して学院とする)は早稲田大学付属の高校である。いわば早稲田大学の本流、嫡出子である。
高校野球のファンにすれば「東京の早稲田」と言えば、早稲田実業学校(早実)のイメージが強いが、早実は早稲田大学の系属である。
もともとは全く関係がなかったが、就学児童の減少という時代の中で、将来のために両校が手を結んだものである。しかし系属であって付属ではない。
こんな話がある。学院の監督が強化試合を行うため、面識がない学校に出向いて試合の申し込みをしたら、予備校とは練習試合はしない、と断られたらしい。
早稲田学院と名乗る予備校がある。学院は東京を離れると知られているようで知られていない超難関校である。
学院が過去に甲子園に出場したことはないようだ。しかし東京では実力校として数えられているという。2010年の西東京大会では準決勝で早実と対戦したことが記載されていた。
超難関校と高校野球の課題というものは2つある。ひとつは優秀な選手の確保であり、もうひとつは勉強と野球の両立ができるかということである。
学院にはスポーツ推薦というものはないらしい。慶応も、高校のことではないがあの江川の入学を認めなかったくらいだから、スポーツ推薦を認めていないはずである。学校の権威のためにも超難関校ほどスポーツ推薦を認めない。
学院には一般入試の他に、自己推薦入学試験がある。しかしこの自己推薦入試もかなりの難関であるらしい。大学生になって、研究ビジョンまで持っていないと合格はないとされている。
超難関校の野球選手は、頭はいいのに野球が好きだ、という生徒が集まることになる。
学院はなにより学業優先である。中くらいの成績で合格した生徒は、よほど勉強しないと授業についていけないらしい。
学院の監督にこんな話があった。
「選手たちは頭がいいので理解力は高いのですが、先読みをしてしまうのです。春の段階で自分は無理だと、夏のベンチ入りを諦めてしまう子もいます。しゃにむになれないというか、頭の中で計算してしまうところが見受けられます」
確かにここがポイントのように思える。
誰もが予想するように、超難関校と高校野球は、学校にも生徒にも両立しにくいものであることがよく分かる。しかしそれでいい。がむしゃらにスポーツなどやらないほうがいい。
では慶応に何があったのか。特別に有望な選手を地方から引っ張ってきたということもないようだし、かつてのバレーボールの大松監督のように鬼の特訓をしたようでもない。監督さんは知的でハンサムな人である。
あったのはサラサラヘアー、シティボーイ、ハンサム、スマート、色白選手である。
新聞は「新しい風が吹いた」と報じている。監督さんは「高校野球の新たな可能性や多様性を示すことができた」と述べている。
この「新しい風」「新しい可能性、多様性」とは何を指しているのだろうか。ヘアースタイルのことだろうか。
慶応の選手は野球と勉強の「二択」ではなく「両立」を目指し実現させた。
今まであり得ないことが起きてしまったのである。新しい風が、超難関校と高校野球の課題をすべて解決してしまったようである。
いつのころから、高校湯汲の選手たちは笑いながらプレーをするようになったのだろうか。私に言わせれば笑いではなくニヤニヤである。
9回6点差でも仙台育英はニヤニヤしていた。なんとかしなければという悲壮感がない。明るければいいというものでもない。
6点差でも笑っているなら負けても泣くな。ピッチャーは打たれたらニヤニヤするな。
慶応監督はこんなことも述べている。
「この思い出に浸る人生にはしないでくれと、部員全員に伝えたい。甲子園優勝は素晴らしいが、彼らの未来にはもっと楽しくて明るいこともある。そういうものを目指してほしい」
このコメントはいつなされたものなのだろうか。優勝直後のことなのだろうか。そうだとすればずいぶん冷めた発言である。悪いとは思わないがスマートすぎる。
慶応の優勝は、超難関校と高校野球の課題を解決したことになると言えるが、高校野球のレベルを下げたと言えるかもしれないし、高校野球選手のレベルを上げたと言えるかもしれない。
慶応球児には、この優勝の思い出に浸ることもなく、もっと素晴らしい人生が待っている。なんとすごい言葉であろうか。これぞ超難関校の野球である。
と、このブログは書き終えたのであるが、慶応高校にはスポーツ推薦があるらしい。
今回甲子園のメンバーで一般入試組は1人であるとのネット記事があった。
本当なら慶応に騙されたことになる。KO負けである。 (了)
コメント