娘の夫はなんと呼ぶのがいいのだろうか。婿さんでいいのだろうが、婿というと婿養子という意味が強く、なんとなく使いづらい。
義理の息子と言っては、仕方なく息子にしたようでもあり、味も素っ気もない。しかしうちの婿さんは私を義理の父と呼ぶ。
女房の両親は私をずっと苗字で呼んでいた。面倒な問題が生ずるのを避ける人たちであった。
その婿さんが是非見てほしいと1枚のDVDを貸してくれた。
セントオブウーマン(Scent of a Woman)というアメリカ映画である。
婿さんが、「この主人公をお父さんは気に入りますよ」、とか「この主人公はお父さんにそっくりです」と言ったのか、その辺のことは詳しくは判らないが、そんなこともあって私にこのビデオを勧めたらしい。
いずれにしてもこの映画の主人公が、私に何らかの意味で似ているということであるらしいから、婿さんの私に対する感情とか理解度を示すことになる映画ということになる。
そうと聞いては彼の積年の私に対する気持ちを知ることになるから、なかなか観る勇気がなく、すぐには観ることができなかった。
10分くらい観ては、後はまたにしようとテレビを切った。どうもきついセリフが多すぎて物語に入っていけない。
それを4回ほど行い、一部を先送りしながら1週間近くかけて何とか見終わった。1枚のDVDにこれだけ時間をかけたのは初めてのことであった。
人生を悲観する盲目の退役軍人と、人生の岐路に立たされる青年との数日間の交流を描いたものである。
いろいろエピソードは散りばめられているが、あまり緻密なプロットではない。
不思議なのは映画の題名である。なぜScent of a Womanなのか。女性の香り。邦題では夢の香りとしているようだ。
主人公が女好きなことは分かる。しかしどう見たって題名と内容の関連が判らない。
アメリカ社会に生活する者しか分からないことなのであろうか。
婿さんが私に勧めた理由は何なのだろうか。ここにあるのは人生を悲観した退役軍人の生き方。懲戒委員会での人間高潔さが大事だという演説。そして女性の香り。
主演のアル・パチーノが私に似てハンサムであることは良く判る。
しかしやはり婿さんには誤解されているような気がする。(了)
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