世の中で一番怖いものが地震ということは同感だが、2番目が雷と言うのはすこし意外である。確かに恐ろしい音を立て、夜でもまっぴかりになる稲妻には驚くが、家の中にいればさほど怖いものでもないと思うからである。家の中にいること自体が危険だという地震に比べるとまだいいほうかなと思う。しかし落ちれば命に関わることになるのであるから怖いものであることに変わりはない。
母は雷をひどく怖がっていた。娘の頃、畑での農作業中に落雷の経験をしたことがあるらしい。近所の年寄りが、「雷が鳴り始めたな」とキセルを吹かしながらつぶやいていた矢先、そのキセルに雷が落ちてその年寄りは死んでしまったという。母は無事であったようだ。
どこにも逃げ場のない平面地での農作業では、雷は危険極まりないものである。
先日も宮崎の高校でサッカーの試合中に落雷事故があった。2人が重傷だという。サッカーは雨天決行するから昔から落雷事故が多い。
落雷は遠くで鳴っていれば安心ということはないようで、突然目の前で落ちることがあるという。宮崎の事故は全く予兆がなかったと関係者が言っている。
なんでも逃げるが勝ちである。「雷なんかにビクビクすんな」などという体育系の教諭が時々いるが、こういう人が事故につながっている。
地震、雷となれば次は火事であるが、最近の火事は死者が目立つような気がする。深夜に出火することが多く、いつも「この家に住むなんとかさんと連絡が取れません」という報道がある。
高齢者は家財道具を足の踏み場もないようにおいて生活している事が多い。地震がくればタンスや食器棚に押しつぶされることになる。火事となっては逃げ場に迷うのではないだろうか。それに高齢者は足腰が弱っている。
考えてみると我が家の階段は1ヵ所しかない。2階で寝ているから、もし1階から出火ということになれば逃げようがない。ベランダに縄梯子といっても足がもつれてベランダから真っ逆さま、ということになるのは目に見えている。非常時の対応も若いつもりで考えていたらなんの役にも立たないことになる。
昔のおやじは怖かったらしいが、わたしには親父がいないから分からないし、周囲のおじさんたちはみんな優しかった。
しかしこう言っては父親の権威に関わるが、昔のおやじは仕事以外にやることもなく、暇な生活をしていたのではないだろうか。
簡単に言ってしまえば、パチンコやテレビのない時代、おやじたちはどうやって過ごしていたのだろうか、ということである。結構退屈な生活をしていたのではないだろうか。
「ちゃぶ台返し」というものがあった。ちゃぶ台を知っている人はほとんどいないと思われるが昔の食卓である。
その家の父親は、家族との食事中面白くないことがあると、ちゃぶ台の両端をもって茶碗から皿から汁物があろうがすべてひっくり返してしまうのである。
アニメの「巨人の星」の父親星一徹は毎回エンディングでやっていた。テレビドラマの寺内貫太郎一家においては小林亜星さんがやっていた。
家父長制の元、父親には権威が与えられていたが、実際は寂しい生活をしていたことになる。ちゃぶ台返しをするしか鬱積する気持ちを吐き出すことができなかった。父親とはそんなものだろうなと思う。(了)
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