先週、喉頭がん手術後6カ月の検診があった。担当医は同席せず、上席医師や研修医5人が私の内視鏡の画像を検討した。
結果、再発・転移等の異変は現時点ではない、ということであった。
前回の検診の際担当医から、6カ月検診で変化がなければ今後の定期検診は2カ月に1回でいいでしょう、ということであったが、やはり術後1年は毎月ということで様子を見ましょう、と今回の検診の責任者と思われる医師の判断で、今後の予定がそういうことになった。
私が喉頭がんの手術を受けた病院は、埼玉県にある大学病院である。私はここで、「レーザー切除術」によって喉頭がんの手術を受けた。
私の喉頭がんは声門癌のT1a、頸部リンパ節に転移していない初期のがんである。
この場合治療は放射線による場合と外科的手術がある。外科手術は以前は喉を開いてがんを除去したものであったらしく、患者の負担は大きい。
経口的というのはそうした負担をなくすための術式らしい。
自分の手術を見たわけではないが、口と喉が一直線になるようにして、口から筒を挿入する。そこから顕微鏡で確認しながらレーザー光線で焼き切るというようである。この病院のホームぺージに映像が載っていた。
放射線によるか手術をするかの選択を担当医から求められたが、病院としては最初から手術ありきのようであった。
放射線治療は期間が長い、やけど状態になる、味覚などに変化が生じる、ということが説明されるので必然手術となる。
初期喉頭がんの治療は放射線が主流であるらしい。しかこの病院の場合はこの術式の完成度を高めた医師がいたようで、レーザー切除というとこの病院の名前が出る。
喉の異変に気がついたのは病院に行く4カ月前くらいのことである。声がおかしいのである。かすれ声になり、時折声がひっくり返ったようになることもある。
しかし1年前ほど前に同じようなことがあったので放ってしまった。その時は加齢によるかすれという近所の開業医の診断であった。
今回も同じだろうと思っていたがどうも様子がおかしい。開業医はすぐさま紹介状を出すからすぐに大きな病院に行ってください、と言う。
担当医はまだ少年の面影が残るような若い研修医であった。
すぐに喫煙について聞かれた。喉頭がんの95%以上はタバコが原因だそうである。
タバコを吸わなければほぼ喉頭がんになることはない、という説明を受けた。
初診から手術まで1カ月半くらいであった。当初は2か月後くらいであったのだが、キャンセルが出たということで2週間早まった。
がんは進行するものと聞いていたので気が気でなかったが、少しでも手術が早まればそれに越したことはない、と少し安心した。
手術までの間は検査、検査の連続である。他の病院にMRIやCTを受診することも何度かあった。
細胞検査のときはまさに学生さんたちの勉強材料となる。このことはあらかじめ承諾させられる。大学病院はあくまで教育機関である、ということが強調されている。
通常の病院のようなサービスというものが考慮されていない。個室はあくまで個室を必要とする重篤な患者に限られる。金を出せば個室に入れるということはない。
看護師さんたちも実に事務的である、余計なことは一切しない、というように見える。費用は他の病院に比べれば安いのかもしれないが、患者としては少々寂しい思いをする。
入院期間は6日間。手術をして5日目に退院した。レーザーで焼き取るような手術であるから、術後の抜糸とかケアーはない。ただ化膿止めや痰の薬を飲むだけである。
レーザー手術でよかったのかどうかは分からない。最近の放射線治療の好成績を聞くと気持ちも動くが、いまさらどうしようもない。
ただ言えることは放射線治療は面で治療するがレーザーは線である。どこまでがんが浸潤しているかは目で見たうえでの判断である。
医師は細胞検査でがんがないところまで切り取ったと言う。
一方、放射線治療はいわばがん細胞を一網打尽にするものであるが、本当にすべて消し去ることができるのか。また同じ個所に再発した時は2度目の照射はできないとされている。
いずれもがんの再発転移に関してオールマイティーではない。
幸いなことに喉頭がんはサイレントながんではなく、ガラガラ声で賑やかに現れるから比較的初期に発見できた。
がんは初期に発見できれば生存率は高いという話を信じるしかない。
私の喉頭がんはこれからどう変化するのか、しないのか。
あまり使いたくない言葉であるが、まさに神のみぞ知る、である。(了)
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