評論家の樋口恵子さんは御年92歳になられる。70代の半ば頃、駅のトイレでの死闘を雑誌に書かれていた。
駅の和式トイレを利用した時、どうしても立ち上がることができなくなってしまった。
しかたなく、じめっとした床にトイレットペーパーを敷いて、床に両手をついて、なんとかガバッと立ち上がったが、時間にしてゆうに10分はかかった。思い出すのも悲しい「死闘」でした。
昨日できたことが、ある日突然できなくなる。それが、「老いる」ということなのですね。まさに「老いるショック」。
そうやって少しずつ、できないことが増えていく。老いの現実を実感したという意味では、思い出したくはありませんが、私にとってその日は「トイレ記念日」でした。
なかなかユーモアのある人である。
ずいぶん長い間和式トイレの経験はないが、しゃがんで何か作業をして立ち上がれないということは何度も経験している。草むしりや車のタイヤ掃除をしているときである。
私は布団で寝ているから立ち上がるという動作が必要になる。そばに椅子をおいて、それにつかまり立ちをしなければ立ち上がれない。
立ち上がれば立ち上がったで足元はふらついている。よほど気をつけなければそのままつんのめって壁に額をぶつけることになる。
来年には国民の5人に1人が75歳以上となり、国民の3割が65歳以上、そこら中じいさんばあさんだらけになる。
自分はそのじいさん達とは別だと考えがちだが、どうしても立ち上がれないという現実は認めざるを得ない。
歳をとったら筋肉と言われている。寝たきりではないのだから、無理してジョギングや筋力運動をしなくても、普通のウォーキングやスクワットで筋肉は維持できるものであってほしいが、しかしどうも減少するばかりで、増えるどころか維持することが難しくなっている。
人生、いみじくも老いれば「きん力」。これは偶然のことではない。
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