加藤剛さんの思い出

つぶやき

 昨晩、埼玉テレビで大岡越前を見た。リモコンを操作している時、この番組の短いセリフが耳に入り、それが少し気になってチャンネルを替えなかった。
 加藤剛さんが30年にもわたって演じてきたシリーズの、再放送というか、何度再放送したか分からない、というような番組である
 
 たしかTBSかテレビ朝日で制作したはずであるが、埼玉テレビなどで放送されると、どこかのセコハン安売り品のようにえる

 調べてみると大岡越前の初回放送は54年も前の1970年。加藤さんは32歳制作はTBSであった。
 物故者名簿のような出演者である。加藤さんも今はなく、大坂志郎、竹脇無我、松山英太郎、片岡千恵蔵。若い人にはお経のような名前である。

 昨日観た番組がいつ制作されたものか分からないが、芦屋雁之助さんが出演していた。妻と幼い子供を江戸に残して大阪で泥棒家業をしていた男の、妻恋しさ、子供逢いたさのお涙頂戴の物語である。ストーリーは腹が立つほどお粗末な内容であった

 加藤剛さんが早稲田の学生であった週刊誌で見たことがある。演劇博物館をバックにした写真が掲載されていたが、今まで見たこともないような二枚目で、次代を担う大スターとしての雰囲気があった。

 ウィキペディアに面白い記事があった。加藤さんは俳優座に所属していたらしいが、同期の横内正は、養成所で加藤と初めて会った際、その美男子ぶりに驚き、「こんな二枚目がいるんじゃかなわない」と、俳優座を退団する決意をしたらしい。
 横内さんは暴れん坊将軍」で大岡越前演じていたが、吉宗の家来として役であるから、どこか卑屈で精彩を欠いていたように思う。

 見終わって、加藤さんはどうしてこんな番組に30年も出演したのだろう、という疑問が湧いた。
 俳優座出身の演劇人がこんな勧善懲悪の浪花節的子供だましのような番組に出演することはあるまいと思うのである。もっと演劇人として演ずるものがあったのではないだろうか
 
 加藤さんが大岡越前として裁きをする姿は実に格好いいが、そうであればあるほど大衆演劇になってしまう。加藤さんは使い古された講談話を演ずるような役者ではないと思うのである。(了)

コメント

タイトルとURLをコピーしました