公園とピアノコンチェルト

音楽

 3,4日前、いつも聴いているFM放送の番組予定表に、2月23日、ショパン、ピアノ協奏曲1番と掲載されていた。

 おっいいね、楽しみだな、演奏は誰だろう、と見てみると、ピアノ・角野隼斗、オーケストラ・ポーランド国立放送交響楽団とある。

 角野隼斗(すみのはやと)、聞かない名前だなと思ったが、ポーランドのオケと協演するのだから、かなり有名なピアニストだろうと思い調べてみたら、意外なことに驚いた。

 開成中学、高校から東京大学工学部に進み大学院修士課程修了となっている。日本でも外国でも音楽大学に在籍した記録がない。1995年生まれというから今年27歳。

 「かてぃん」というYouTubeチャンネルで活動し、登録者数は112万人。再生回数は1億4200万回を超えているという。

 前回のショパンコンクールに参加し、本選進出はできなかったが、セミファイナリストになっている。現在プロのピアニストとして活動している。

 東大に行くか芸大に行くか、という話はよく聞くが、音大出身者ではないピアニストとしては初めての人ではないか。

 この曲の放送開始時間を3時過ぎと確認し、ウォーキングのため、いつもの公園に向かった。入間市にある彩の森公園である。正式には彩の森入間公園という名称であることを昨日知った。
 
 ものすごく広い公園ということではない。2つの池を配して、様々な木々が、まさにあるべきところにある、というようにレイアウトされた洋風公園である。

 和風ではないから洋風と書いたのだが、新宿御苑にも、昭和記念公園にも、井の頭公園にも、浜離宮にもない、とにかくしゃれた、洗練された公園である。
 家内が通う絵画教室の先生は写生の公園としてここを選ぶ。教室の近くに航空公園という広い公園があるが、そこでは絵にならないらしい。

 私はその公園があることはもちろん知っていたが、ただ通り過ぎるだけで歩いたことはなかった。
 昨年、首や腰などの手術したことからリハビリとして歩くことが必要となった。家の近所を歩き回るより、少し離れたところで歩いた方が、何かと人の目に触れずいいだろうと、この公園に来るようになった。

 ポプラ、メタセコイヤ、イチョウ、そしてケヤキ。冬の木立の美しさがそこかしこにある。木立を通して見る池の景色は風景画を見るようである。そう、その木立からあのシベールが現れるのではないかと思うような美しい公園である。

 この公園に1周1キロ、2キロというウォーキング、ジョギングコースが設けられている。このコースをダックスフントにも追い抜かれるようなテンポでひたすら歩く。

 1周の終わりころには足がもつれる。もつれた足を休めようと、コースを離れた枯れた芝生に立ち止まると、木立の陰から人が近づいてくる。シベール、のはずはなく、妻であった。

 あまり遅いので心配になったという。きのうは2周した。疲れて歩けなくなってから歩くのがリハビリです、という整体師の話を実践しなければと思ったからである。

 3時に家に戻った。コンチェルトが始まった。どうしても愛聴盤と比較してしまう。
 私の愛聴盤はなんといってもステファンスカ。

 オケの序奏を聞いて指揮者は誰かと気になった。若い指揮者だろうと思ったら、マリン・オルソップという60歳を過ぎた女性の指揮者であった。多少驚きがあったが悪くはない。とにかく最後まで聞いてみよう、という気になった。

 角野隼斗の若さや経歴を知って、こういう演奏をしてもらいたい、というイメージがあった。細かなタッチのことは私には分からない。この曲をどういう気持ちで弾くかということである。

 ショパンコンクールの本選で弾くことが果たせなかったこの曲を弾くのである。思い入れは深いはずである。この演奏は昨年このオケが日本で公演した時のライブ録音であった。ショパンコンクールの1年後ということになる。

 私が期待した通りの、思い切りのいい演奏だった。思わず手を叩いた。ブラボ―と言うところだが、サッカーの長友の顔を思い出し、品がないと思ってやめた。

 抒情とか感傷は表現において大切なことであるが、自分はショパンをこう弾きたい、という現代の日本の若者がそこにいたような気がする。

 抒情がなかったいうことではない。第2楽章には心を揺さぶる歌があった。
 マリン・オルソップはバーンスタインの弟子だという。最初の数小節を聴いて若い、もちろん男性の指揮者ではないかと思ったが、角野の情熱に応えたということだと思う。
 私が最も好きなコンチェルトのCDがまた1枚増えることになった。(了)

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